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親の気持ちは親にならないと分からない? 子どもの気持ちは……?

「親の気持ちは、親にならないと分からない」

子どもの不登校に悩む親がそう嘆いていた。似たようなことを言う人はたくさん見かける。では、子どもの気持ちはどうだろう。

「誰にだって子ども時代があるのだから、子どもの気持ちは分かる」

そんなことを言う人も多い。

テレビドラマにもなったマンガ『ミステリと言う勿れ』でも、殺人を犯した刑事が「親になったことのないやつに何が分かる!?」みたいに怒るのに対して、主人公が、

僕は子どもをもったことはないですが、子どもだったことはあります。親になると忘れてしまうのかもしれませんが、僕は今、子どもの立場でものを言ってます。

と答え、これがなんとなく良いこと言っているみたいな雰囲気になっている。
上記の親も「この子の気持ちは分かるんです」と言っていた。

でも……、本当にそうだろうか!?

いや、この感覚は落とし穴だ!

あなたに分かるのは、「子ども時代のあなた」の気持ちである。
あなたがどんな人であるにしろ、あなたと、あなたの親は、別人である。だから、「あなたの親」のもとで育った「子ども時代のあなた」の気持ちなら、分かるだろう(本当はこれすらも記憶の改変などで怪しいが)。
しかし、「あなたという親のもとで育っている子どもの気持ち」なんて分からない。

もちろん親子だから性格は似ているだろうが、「子ども時代のあなた」と「あなたの子ども」は別人なのだ。完全に分かることなどありえない。せいぜい想像するくらいが関の山だ。
まして他人が「親になったことはないけれど、子どもだったことはあります」と言って、よその家の子の気持ちを代弁することなど絶対にできない。できると言うなら、それはもうただの傲慢だ。

「親の気持ち」も同じだ。あなたが親になってみて「親の気持ちが分かるようになった」と思ったら、それは大間違い。
あなたには、「あなたという子どもを育てた親の気持ち」は絶対に分からない。「あなたの親」と「あなた」の育児環境は異なるし、「あなた」と「あなたの子」の性格だってちがうのだから。

分かりっこないものを、さも分かるかのように言うのは、一方的だし押しつけがましい。

「分からない」からスタートし、分かろうと努力しつつ、分かった気にならないよう注意し、分からないままのものを抱え、分からない同士で関わり続ける。

親子、夫婦、友人、医師と患者。あらゆる関係で、こういう姿勢が大切だと思う。

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