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宮本輝『流転の海』全巻読書会レジュメ(第1~3部)

こんにちは。

宮本輝さんの大河小説『流転の海』を、月に2回、1回1章のペースを原則として読み進めています。おおむね、月刊誌への1回の掲載は1章に相当していると睨んでいます。

今回は、既読分のうちの、
第一部:流転の海
第二部:地の星
第三部:血脈の火

について、概略をまとめてみたいと思っています。なお、作成にあたっては、以下の書籍も参照いたしました。

「流転の海」読本 堀井憲一郎

全体の概略

『流転の海』全九部(または、『流転の海』シリーズと表記することがあります)は、既に50歳になっていた松坂熊吾と妻・房江の間に産まれた伸仁親子を中心に織りなされていく大河小説です。50歳にして初の実子を得た熊吾に、伸仁は何をもたらしたのか。それがこの物語の焦点の一つです。

舞台は、昭和22年(1947年)の大阪。40歳にして中国大陸へ出征していた熊吾は、生還して伸仁を授かります。元々実業家だった熊吾は事業の再建に向けて奔走しますが、そこで出会った人々との交流や裏切りが、もう一つの柱となり、さらに舞台となった昭和22年から、伸仁が大学生となる40年までの史実が背景として織り込まれていきます。

松坂家を中心とした眷属 けんぞく(※)たちの成す「小宇宙」を描いたのが、この『流転の海』シリーズと言えると思います。

※眷属(けんぞく) 仏教用語で、その人と縁のある人々という意味。その人の生命次元での傾向性に共通性がある場合、「眷属」ということがあります。宮本さんの作品には、仏教用語が頻出しますが、この「眷属」は重要な概念です。他には「 ごう」なども最重要概念です。

第一部:流転の海(昭和22春~24年春)

40代になって中国へ出征した松坂熊吾は、生きて還ってきた。昭和22年、大阪に戻った熊吾には、房江との間にもうけた長子・伸仁があった。50歳になって初めて得た実子は、熊吾に何をもたらすのか。壊滅した戦前の事業の再建に、獅子奮迅の、まさに「戦い」を熊吾は開始する。かつての部下の裏切りもあるが、新しい知己も得た。妻・房江の来歴や、2人の出会いが語られたあと、房江と伸仁の健康のため、熊吾は故郷の南宇和に戻ることを決意して、大阪を後にする。1987年刊。

第二部:地の星(昭和26年春~27年春)

南宇和での生活は、果たして熊吾にとっては「退屈」なものであった。牛同士を戦わせる闘牛の騒動を収めるため、熊吾は一方の牛の眉間を銃で射貫いた。それが縁で、網元の男から選挙参謀になってほしいと懇願される。また、幼い日の相撲が元で脚を壊したとして、熊吾に恨みを持った伊佐夫に着け狙われるようになる。何人もの生き死にとが綴られていく中で、熊吾は再び大阪での事業を興すことを決めてしまう。1992年刊。

第三部:血脈の火(昭和28年春~30年5月)

大阪に戻った熊吾は、消防用ホース修復用の接着剤に目をつけたが、洞爺丸台風で在庫を失ってしまう。このことから、少しずつ熊吾の周囲に不協和音が流れてくる。伸仁がいたかもしれなかった船が、目の前で炎上・沈没したことは、熊吾に何を思わせたのか。1996年刊。

第四部:天の夜曲(昭和31年3月~9月)

大阪での事業をたたんで、松坂家は富山に移り住んで、新しい事業を興すつもりでいた。しかし、熊吾は早々に富山に見切りをつけ、大阪に一人舞い戻ってしまう。2002年刊。


今回は以上といたします。第4部第3章のレジュメ(6月12日実施分)については、別途作成いたします。最後までお読みくださり、ありがとうございました。それではまた!


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