【100分de名著を語ろう】中井久夫スペシャル(1)
こんにちは。
2022年11月度のclubhouseルーム「100分de名著を語ろう」は、アンコール再放送だったため、1か月のお休みをちょうだいしていました。12月度は、8日(木)から3回は実施する予定でいます。年末29日(木)は、さすがに開催しづらいと思いますので、4回ではなくて3回になるだろうと思われます。
12月度は3冊の著作と、2編のエッセイを扱うことになったようです。
始めに申し上げておきますが、今回中井氏が取り上げられたのは、8月に氏が亡くなったのを受けてではない点です。既にプロデューサー氏が「2年準備に費やした」との発言をされています。そのことは、心に留めておいていいかと思います。
今回の担当講師は、ひきこもり研究やオープンダイアローグの紹介等で、多くの業績を上げている臨床医の斎藤環さんです。氏は、「はじめに」で中井氏に多大な影響を受けていたことを吐露しています。では、8日に取り上げる分に相当するテキストを確認してまいります。
はじめに 義と歓待と箴言知の人
氏の業績が膨大であること 「風景構成法」「寛解課程論」「心のケアとトラウマ理論」や、翻訳、エッセイ等。
対象と深く相互浸透する、歓待の人。
知識欲が権力欲に転ずることを嫌って、理論の体系化を避けた。
体系化・物語化を避けた中井の著作は、どこから、どんな風に読んでもよい。
第1回 「心の生ぶ毛」を守り育てる――『最終講義』
①統合失調症研究の第一人者
不治の病とされていた統合失調症は、回復可能であると1970年代に示していた。
阪神・淡路大震災(1995年)を契機とする「心のケア」論、「トラウマ」理論の導入。重要文献の翻訳。
「予言的というよりは、臨床家として徹底的にフェアであろうとした」
②希望を処方する「寛解課程論」
『最終講義――分裂病私見』=1997年、神戸大学医学部を退職する際の講義を書籍化。
「臨界期(回復時臨界期)」=急性期から回復期に行こうする時期の「発見」
慢性化している「状態(コンディション)」としてではなく「過程(プロセス)」としてとらえ、「治らない」と考えられていたことにNoをつきつける。
「患者と医師が希望を共有できるかどうかは、治療において非常に大きな意味を持ちます」
③絵画療法を取り入れた「風景構成法」
害が少ない形で話題が広がり、患者の「変化」を見て取ることができる。
「むしろ、良い治療環境で安定した状態で描かれる“普通”の絵にこそ、治療上の意味」
「患者をおとしめることなく安全な方向づけを行える」
④徹底して患者に寄り添う
往診や身体の診療を重視。
「神経伝達物質の振る舞いについてはほとんど興味を示していません」
⑤急性期の患者に起こる「あべこべ感」
「分裂病状態にならないためにはエネルギー的に入力が必要であり、またそのためのシステムが必要」(中井)
自他を区別するためのシステム
「ざわざわ感」「つつぬけ感」「あべこべ感」
⑥回復の目安となる「あせり」と「ゆとり」
「自分が世界の中心であると同時に世界の一部でもある」(中井)
「矛盾するものの間で折り合いをつけ、両立させられるかが回復や精神健康の度合いを知るポイントとなるという指摘は大変重要」
患者ができるだけ回復の過程を意識できるような治療を行うべき。
⑦「対話」に関する知恵
「妄想」は自分の正気を証明しようとする必死の努力(中井)
結果には必ず原因があるはずだという思い込みの暴走=つじつまを合わせるような妄想が生まれかねない。
「うっかり自分をみつめよなどどいわないことが重要」(中井)
「対話が正常化を促す場合が多い」
⑧「心の生ぶ毛」を大切にする治療
患者の尊厳を徹底して尊重すること。
「恥じらいやためらいといった、人の心の柔らかな部分」を大切にできるか=治療者としての資質。
⑨「キュア」よりも「ケア」の視点に立つ
「分裂病は本来回復しやすい病気であって、ただ、それを妨げる内外の要因もまた多いというものかもしれません」(中井。太字はテキストでは「傍点」)
「医者が治せる患者は少ない。しかし看護できない患者はいない」(中井)
追記
12月9日(金)以降、追記がされる場合があります。
今回の「レジュメ」は、以上といたします。お読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!
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