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午郎’S BAR 10杯目「書店をテーマにした本」


私も職業柄出版関係の書籍を大量に読んできた。このジャンルの本はやはり書店や出版社の従業員をターゲットにしている本が多く、意外と専門的なものが多い。しかし、その一方で書店員や書店経営者が書いた本も多く存在し、その殆どが「出版業界以外の方々に読んで欲しい」と思って作られたもの、のように思える。
書店という小売りの裏側、店主や経営者の思い、などを1冊の本にまとめて、本を介して読者にアプローチする、書店に関わるものとして至極まっとうな媒体選択に思える。
今回は「書店」に関する本について書いてみたい。


書店関係本の著者の傾向

書店の本の場合大別すると著者は
①     個人で書店を運営している「店主」が書いた本
・「ローカルブックストアである」(ブックスキューブリック 大井実氏著)
・「本屋はじめました」(Title 辻山良雄氏)
等が代表的
②     書店員や元書店員が書いた本
・「劇場としての書店」ほか(丸善ジュンク堂書店 福島聡氏)
・「まちの本屋」ほか(元さわや書店 田口幹人氏)
③     書店経営者が書いた本
・「本の力」(紀伊國屋書店 高井昌史氏)
・「本屋で待つ」(総商さとう 佐藤友則氏)
④     ジャーナリストやライターが取材を経て書いた本
・「本屋は死なない」ほか (石橋毅史氏)
・「本屋のない人生なんて」(三宅玲子氏)
ここで事例として記載したものはあくまで私が読んだことのある代表的なもので、これがすべてではない。
①     の場合著者がどんな思いでどのような過程を経てその店を作ったのか、という内容が多い
②     の場合、本に纏わることや、本を売る立場からの話になるケースが多い。
③     の場合は著者の会社の規模等によって異なるが、例えば高井氏の場合は紀伊國屋書店という書店業界のリーディングカンパニーであるがゆえに、業界全体のことを書かれているし、佐藤氏の場合は自身の体験、そして書店という場を通じて従業員が成長していく姿を書いている
④     の場合、著者本人がテーマを定め、そのテーマに沿って全国の、著者が定めたテーマに合う書店の姿を、取材を通じて明らかにしていく手法になる。

誰をターゲットにしているか


実はこのジャンル、一定の需要が見込める。それは出版業界の人間だ。出版社の営業、書店仲間など。私もそうだが、やはりこうした本は殆ど購入している。尚且つ、できれば書店関係者の書いた本は、その人ゆかりの書店で購入するように心がけていた。以前は仕事で全国を駆け回っていて、例えば「本屋はじめました」は著者が独立前に居たリブロで購入しているし、田口氏の本は岩手のさわや書店フェザン店で購入。また同じさわや書店の栗澤氏が「本屋地元に生きる」を出版されたときは、電話でさわや書店に注文して発送してもらった。
しかし、最近それもなかなかできないのはちょっと残念ではある。
ただその一方で本当は出版業界以外の人たちに読んで欲しい、との思いが裏にあるように推察するが、こうした書店員の本はあまり情報として出てこなかったり、書店店頭でも大きく平積みされるようなケースは稀である。なかなか一般読者にはリーチしないのだろう。
但し一方でこうした本は新聞等が書評を出すケースが散見されるのだが。

なぜか出版業界全体を書いた本は


一方で出版業界の課題について書かれた本もいくつかある。永江明氏「本が売れないというけれど」、佐野眞一氏「誰が本を殺すのか」が有名ではあるが、現場に身を置いている人たちはやはり書きづらいのだろうか。私の知りうる範囲では「本屋がなくなったら困るじゃないか」くらいか。
確かに非常に入り組んでいる業界であり、社会課題、とも言い難いテーマで、そこを丹念に取材することは難しいのかもしれない。

5月下旬に発売される本

そうした中で5月下旬に1冊の本が出版される。
「2028年街から書店が消える日」(プレジデント社 小島俊一著)だ。
タイトルからして挑戦的であるし、また、この本は書店が「発注」しないと店頭に並ばない。
30人の出版業界関係者からの取材をもとに、この業界で課題とされているいくつかのテーマに関しての問題提起と解決に向けた一定の方向性を示す(もの、と推察しているのだが)内容と著者からは伺っている。
恥ずかしながら私もその末席に加えていただいており、「ブックダム近藤」として登場している。私が取材を受けた項目は前職で関わってきた部分で、現在のブックダムでの業務とは関わりのない部分である。正直私のところよりも、他の29人が何を語られているのか興味津々である。著者の意向で1年間は電子書籍を出さないし、できれば書店で購入していただけると幸いである。

経産省が書店振興プロジェクトチームを始動させ、数社の書店経営者から齋藤経済産業相がヒアリングを行っている。そうした流れの中、この本はどう評価されるか。ご一読いただけることを期待します。

午郎’S BAR 今回の1杯

「JAMESON」(アイリッシュブレンデッドウィスキー)
ウィスキーは5大産地と言われ、
*スコットランド(スコッチウィスキー)
*アメリカ(バーボン及びテネシーウィスキー他)
*カナダ(カナディアンウィスキー)
*日本(ジャパニーズウィスキー)
そしてアイルランド(アイリッシュウィスキー)
アイリッシュウィスキーは他の産地と醸造過程が微妙に異なり、独特の味わいがある。
このウィスキーは今回紹介した「2028年 街から書店が消える日」の著者が以前書店経営の経験から書いた本「会社を潰すな」の主人公が行きつけの店でキープしている銘柄。出来ればロックかハイボールが良い。