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ACBD批評グランプリ2024が発表されました!

こんにちは!
大阪・谷町六丁目にある海外コミックスのブックカフェ、書肆喫茶moriの店主です!

12月ですね。年末ですね。
この季節になると発表されるのが、フランスのACBD(l’Association des Critiques et journalistes de Bande Dessinée:バンド・デシネの批評家とジャーナリストの協会)によるACBD批評グランプリです!
バンド・デシネのプロたちによるマンガ賞!
いつも楽しみにしている賞のひとつです。

昨年のノミネート・受賞作品は以下の記事をご覧ください。

2024のグランプリも、ノミネート15作品のうちから最終ノミネート5作品が選ばれ、2023年12月5日に最優秀グランプリ1作品が発表されました。
今回の記事ではその結果を紹介していきます!

なお、Youtubeライブでもお話しています。
よかったらこちらもご覧ください。


ノミネート作品

『Ceux qui me touchent』(私に触れる人たち)

作:Damien Marie(ダミアン・マリー)、Laurent Bonneau(ローラン・ボノー)、発行:Bamboo – Grand Angle

5歳の娘を寝かしつけるのに絵本がなかったためファビアンは彼女と素晴らしい物語を創作する。そのことが自分の人生を変える兆候になるとは思わずに…。40歳の青年と娘の交流を通して、ものの見方が変わるような現代的で親密な物語。

Fnac France Inter BD賞2024最終ノミネート。

『Contrition』(懺悔)

作:Keko(ケコ)、Carlos Portela(カルロス・ポルテラ)、発行:Denoël Graphic(原書:スペイン語)

フロリダ州の法律では、性犯罪で有罪判決を受けた者が、子どもの活動エリアから300フィート以内に住むことを禁じている。”懺悔村”は、刑期を終えた性犯罪者が監視下のもと集められている。ある時、住民の一人が焼身自殺し、記者のマーシアはその奇怪な死の調査を始める。

Fnac France Inter BD賞2024ノミネート。アングレーム国際漫画祭2024SNCF乗客ミステリー賞ノミネート。ACBD - Les indispensables de l’été 2023(ACBD夏の必読10選)にも選出。

『L’été des charognes』(腐肉の夏)

作:Sylvain Bordesoules(シルヴァン・ボルドゥール)、原作:Simon Johannin(シモン・ヨハニン)、発行:Gallimard

シモン・ヨハニンの小説のコミカライズ。
2000年代後半のフランスの人里離れた貧しい田舎町。父親は酒におぼれ、野良犬がうろうろするなかを少年たちがたむろする。この少年時代から逃れるために世界と対峙する。

作者のシルヴァン・ボルドゥールさんは日本語のインタビュー記事がありましたのでリンクを貼っておきます。

『Les évaporés』(蒸発したもの)

作:Isao Moutte(イサオ・ムーテ)、原作:Thomas B. Reverdy(トマス・B・ルヴェルディ)、発行:Sarbacane

イサオ・ムーテはフランス在住のフランス系日本人。トマス・B・ルヴェルディの小説のコミカライズ。
パリに住むユキコは失踪した男性の行方を追って日本に帰国する。山谷の貧困労働者地区、仙台周辺の福島原発事故による避難民のキャンプを調査していく。

『La femme à l’étoile』(星を持つ女)

作:Anthony Pastor(アンソニー・パストール)、発行:Casterman

19世紀後半、アメリカ北西部。雪に閉ざされた廃村で、隠れ家を探していた二人の逃亡者が出会う。お互いに重い過去を持つ二人は最初は敵意と不信感でいっぱいだったが、彼らを捉えに来た保安官から逃れるために共闘する。愛と救いを求めるバイオレンスな西部劇。

Fnac France Inter BD賞2024ノミネート。ACBD - Les indispensables de l’été 2023(ACBD夏の必読10選)にも選出。

『Loire』(ロワール)

作:Etienne Davodeau(エティエンヌ・ダヴォドー)、発行:Futuropolis

かつて数年間をロワール川のほとりで一緒に過ごしたアガーテから招待状を受け取ったルイ。ルイは教えられた待ち合わせ場所に向かってロワール川のほとりを歩いていく。そこに待ち受けているのは…。
ワイン知らず、マンガ知らずのエティエンヌ・ダヴォドーの新作。

『The Nice House On The Lake T1』(湖畔の素敵な邸宅1巻)

作:James Tynion IV(ジェームズ・タイニオン4世)、Martinez Alvaro(マルティネス・アルヴァロ)、発行:Urban Comics(原書:英語)

みんなウォルターの知り合いだった。子どものときの知り合いもいれば、数か月前に会った人もいる。そしてウォルターは少し…変だった。ウォルターの家に招かれた招待客。先の読めない現代ホラー。

アイズナー賞2022Best New Series受賞。Fnac France Inter BD賞2024最終ノミネート。ACBD - Les indispensables de l’été 2023(ACBD夏の必読10選)にも選出。2巻がアングレーム国際漫画祭2024公式セレクション。

『La petite lumière』(小さな光)

作:Grégory Panaccione(グレゴリー・パナッチョーネ)、発行:Delcourt

イタリアの作家アントニオ・モレスコ(Antonio Moresco)の同名小説をコミカライズ。「私は姿を消すためにここに来た」という書き出しで始まる。山の中の廃村で隠遁生活をしている年老いた男は、山の中で小さな光を見かける。村人に聞いても誰も知らない。男がその光の源を探しに行く。

ACBD - Les indispensables de l’été 2023(ACBD夏の必読10選)にも選出。

『L’université des chèvres』(ヤギの学校)

作:Christian Lax(クリスチャン・ラックス)、発行:Futuropolis

1833年、フォルトゥネ・ジャベールは南アルプス山脈の村から村へと巡回して子どもたちに読み書きや算数を教えていた。この遊牧教育は「ヤギの学校」と呼ばれる。2018年、アフガニスタンの山々を旅してヤギの学校を実践していたサンジャルはタリバンに追われる。時代も場所も越えて危険にさらされる学校教育への怒りと寛大さ、美と愛にあふれる壮大な物語。

『Le visage de Pavil』(パヴィルの顔)

作:Jérémy Perrodeau(ジェレミー・ペロドー)、発行:2024

帝国の筆記者パヴィルが乗る飛行機が、帝国外のカスペツィア半島の人里離れた村、ラピョサに墜落した。 数か月間滞在することを余儀なくされた彼は、この村の日常生活に貢献することを約束して、このコミュニティの習慣を研究する。 受容と寛容、そして人間社会における信念の所在を問う160 ページのSF物語。

アングレーム国際漫画祭2024公式セレクション。

最終ノミネート作品

『Chumbo』(チュンボ)

作:Matthias Lehmann(マティアス・レーマン)、発行:Casterman

作者の家族の歴史にインスピレーションを得て1930年代から2003年までの20世紀のブラジルの近代史が浮き彫りにされる。「チュンボ」とは「鉛」を意味し、ブラジルでは1968年から1978年までの軍事独裁政権時代を「鉛の年」と呼ばれる。裕福で鉱山を経営する族長の二人の息子セベリーノのラミレス。セベリーノは左派に傾倒しジャーナリストになり、次男のラミレスは軍事政権を支持する。ブラジルの風刺画や広告などを描いた独創的なビジュアルを織り交ぜつつ、正反対の道を進む兄弟の人生を描く。

Fnac France Inter BD賞2024ノミネート。アングレーム国際漫画祭2024公式セレクション。

『Environnement toxique』(原題Ducks: Two Years in the Oil Sands)

作:Kate Beaton(ケイト・ビートン)、発行:Casterman(原書・英語)

学生ローンを返済するためにカナダ・アルバータ州のオイルラッシュに便乗して西に向かう。オイルランドでの厳しい生活、カナダの知られざる面を描く。インターブックス社から邦訳の刊行も予定。

アイズナー賞2023Best Graphic Memoir、Best Writer/Artist受賞。ハーベイ賞2023Book of the Year受賞。Fnac France Inter BD賞2024ノミネート。

『Frontier : explore-expano-escape』(フロンティア:探索・展開・脱出)

作:Guillaume Singelin(ギヨーム・サンジュラン)、発行:Rue de Sèvres – Label 619

地球の資源が枯渇し、人類は太陽系の惑星の彼方「フロンティア」に向けて旅立つ。新時代のゴールドラッシュに、未知のものに情熱を注ぐ科学者ジス、気性の荒い陽気な傭兵カミナ、地球を知らない炭鉱夫のアレックスの3人の運命が交じり合う。3人の波乱万丈な冒険物語。

Fnac France Inter BD賞2024ノミネート。アングレーム国際漫画祭2024エコ賞ノミネート。ACBD - Les indispensables de l’été 2023(ACBD夏の必読10選)にも選出。

『Je suis leur silence』(私は彼らの沈黙)

作:Jordi Lafebre(ジョルディ・ラフェーブル)、発行:Dargaud

若くて優秀な精神科医エヴァは、患者の一人から祖母の遺言の読み上げの立会人になってほしいと頼まれスペイン・カタルーニャにあるワイン農園を訪れる。しかしそこで殺人事件に巻き込まれ…。『最高の夏休み』のジョルディ・ラフェーブルがおくるユーモアたっぷりのスリラー。

Fnac France Inter BD賞2024ノミネート。アングレーム国際漫画祭2024SNCF乗客ミステリー賞ノミネート。

グランプリ

『Le ciel dans la tête』(頭の中の空)

作:Antonio Altarriba(アントニオ・アルタリバ)、Sergio Garcia Sanchez(セルジオ・ガルシア・サンチェス)、発行:Denoël Graphic(原書:スペイン語)

コンゴの鉱山で働かされていて12歳の少年ニベックは地元民兵組織の指導者に徴兵され救われるが、奴隷として売られる。貧困から逃れより良い生活を求めてアフリカを横断しスペインへとたどり着く少年の悲劇と冒険の物語。

アングレーム国際漫画祭2024公式セレクション。

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ACBD批評グランプリ2024はいかがでしたでしょうか?

他のマンガ賞にも選出されているような傑作もあれば、このノミネートで存在を知った作品もあり、今回も気になる作品がたくさんありました。
買ったはいいものの積読しているギヨーム・サンジュランの『フロンティア』や、次の機会にはぜひ買いたいジョルディ・ラフェーブルの『Je suis leur silence』、アメコミ界でめちゃくちゃ評価が高くどんな感想を言ってもネタバレになってしまうと言われる『The Nice House On The Lake』は個人的に読んでみたいと思います。

記事をお読みくださった方も興味のある作品がありましたら幸いです。

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