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Fnac France Inter BD賞2023が発表されました!

こんにちは! 海外コミックスのブックカフェ書肆喫茶moriの店主です!

2023年1月5日にフランスのFnac France Inter BD賞(Prix de la BD FNAC FRANCE INTER)2023が発表されました!
フランスの大手書店Fnacと、ラジオ局France Interが主催するバンド・デシネの賞です!

https://www.fnac.com/prix-bd-fnac

2023年で5回目となるこちらのマンガ賞。
2022年10月にノミネート20作品が発表され、12月に決定された最終ノミネート5作品の中から、2023年1月5日にグランプリが選ばれました!

では2023年はどんな作品が選ばれたのか見ていきます!
Youtubeライブでもご紹介しているので、こちらもどうぞご覧ください!

ノミネート作品

『1629, ou l'effrayante histoire des naufragés du Jakarta』1巻
(1629年あるいはジャカルタの難破船の恐ろしい物語)

作:Xavier Dorison(グザビエ・ドリソン)、画:Thimothée Montaigne (ティモシー・モンテーニュ) 、発行:Glénat

オランダからインドネシアのジャカルタに向けて出航した難破した帆船ジャカルタ号。実話に基づいた、反乱や虐殺、生存をかけた帆船に乗り込んだ人々の心理スリラー。

脚本のグザビエ・ドリソンは『GOLDORAK(グレンダイザー)』のバンド・デシネ化も手掛けています。

『A short story』(ショートの物語)

作:Run(ラン)、画:Florent Maudoux(フロラン・モルドー)、発行:Rue De Sevres(LABEL619) 

映画化もされた陰惨な殺人事件として知られるブラック・ダリア事件の被害者エリザベス・ショートの人生を描く実話に基づく物語。ハリウッド・スターになることをめざし故郷のマサチューセッツからロサンゼルスに移り住み、殺されるまでの彼女の人生を徹底的に研究し、FBIの文書や関係者の証言をもとに描き出す。

アニメ映画も日本公開されたムタフカズのギヨーム・RUN・ルナールとLabel619メンバーであるフロラン・モルドーとのコンビによる作品です。

『Céleste : « bien sûr monsieur Proust » 』1巻
(セレステ:もちろん、プルーストさん)

作:Chloé Cruchaudet(クロエ・クロショデ) 、発行:Soleil

ACBD批評グランプリ2023ノミネート作品。

『失われた時を求めて』の作者マルセル・プルーストの没後100年記念。
プルーストの家政婦にして秘書。彼が没する1922年まで献身的につとめたセレスト・アルバレを描く。

『Celle qui parle』(話すもの)

作:Alicia Jaraba(アリシア・ジャラバ)、発行:Bamboo Grand-Angle

16世紀の中米メキシコの実在の女性マリンチェ(マリナリ)の物語。族長の娘マリナリは父の死後、他国に売られ奴隷にされる。そこへ植民地を求めてやってきたスペイン軍のエルナン・コルテスは彼女の語学力を活かしてメキシコ征服の足がかりとする…。

ACBD2022年夏の必読10作品(Les indispensables de l’été 2022 )。

『Colorado train』(コロラド鉄道)

作:Alex W. Inker(アレックス・W・インカ―)、発行:Sarbacane

ティボー・ベルモーの小説を、未成年の薬物乱用やセックス、暴力、パンクやスケートボードと言ったサブカルチャーを映画にしてきたラリー・クラーク監督風に大胆アレンジ。若いスケートボーダーたちが貧困、退屈、ドラッグに悩まされる姿を描く。
1990年代半ば、コロラド州の山々に囲まれた元鉱山の町。無知でスケートボーダーのマイケル、ホームレスでドラッグ中毒のダラム、学校でいじめられている太ったドン、保安官の父親の言いなりのスージー。退屈な日常をおくる4人は、ある日、行方不明の子どもが半分食べられた状態で発見されて、調査をすることにする。

アングレーム国際漫画祭2023ミステリー部門ノミネート。

『De cape et de mots』(マントと言葉)

作:Kerascoët(ケラスコエット)、原作:Flore Vesco(フロール・ヴェスコ)、発行:Dargaud

かわいい闇』『虫ガール』などのケラスコエットさんの新作バンド・デシネ!フロール・ヴェスコの同名小説のコミカライズ。

没落貴族の娘で自由奔放なセリーヌは、父親の死後、嫁に行く当てもないと母親には呆れられ、女王の侍女となるべく家を飛び出す。宮廷に忍び込んだはいいものの、暴君で気まぐれな女王、ライバルばかりの侍女たち、若くてイケメンだが胡散臭い王の参謀(王様が病気でほぼ実権を握っている…!)と権謀術数が渦巻く宮廷でセリーヌはのし上がれるのか…?!

アングレーム国際漫画祭2023ジュブナイル部門ノミネート。

『L'Âge D'Eau』1巻(水の時代) 

作:Benjamin Flao(ベンジャミン・フラオ)、発行:Futuropolis

水面上昇によって水没しかかったフランス・ロワール地方。人々は陸上に避難するか、水面に「浮く」生活をしている。政府は、自由は制限されるが、緊急の宿泊施設を作って避難を促している。
その命令に抗って生きる家族(母親のジャンヌと二人の子ども、霊感のある犬)、トラウマのある元CRS(フランス国家警察の警備警察部隊)、妻と悲しい別れを経験したハンス…平和の地を求めて過酷な現実を生きる人々の姿を描く。

『Le Poids des héros』(英雄の重み)

作:David Sala(デイヴィッド・サラ)、発行:Casterman

Idea(アイデア)No.393』海外マンガ特集にも載っていた『Le Joueur d‘échecs』(チェス・プレイヤー) のデイヴィッド・サラの自伝。
戦争とレジスタンスの英雄で親代わりであった祖父から強い影響を受けた幼少期。芸術的なイニシエーションを受けたエミール・コール美術学校、忘れがたい自転車レースなど。

ACBD批評グランプリ2023ノミネート作品。

『Le Secret de la force surhumaine』(超人の強さの秘密)

作:Alison Bechdel(アリソン・ベクダル) 、発行:Denoël Graphic(英語オリジナル版『The Secret to Superhuman Strength』はMariner Books)

ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』のアリソン・ベクダルがエクササイズ愛を語る。しかし肉体を鍛えれば鍛えるほど精神が邪魔をする。彼女は東洋哲学やロマン主義、超越主義の詩人たちの中に悟りを見出していく。

ACBD批評グランプリ2023ノミネート、アングレーム国際漫画祭2023公式セレクション。
アリソン・ベクダルはアングレーム国際漫画祭2023のグランプリ候補3人のなかにも選ばれました。

『Mon ami Pierrot』(わが友ピエロ)

作:Jim Bishop(ジム・ビショップ)、発行:Glénat

Lettres perdues』でほろ苦い少年少女の成長物語を描いたジム・ビショップの2作目!
貴族の娘クレアは伯爵の息子ベルティエとの結婚が決まっていた。しかし結婚の間際に、魅力的な大道芸人のピエロと出会ってしまう。彼女の人生にかけていた自由を謳歌するピエロに惹かれていくクレアは彼とともに家を飛び出す。しかしピエロの正体は!?そしてクレアを探しに旅に出たベルティエに待ち受ける運命は!?
日本のアニメや白浜鴎さんの『とんがり帽子のアトリエ』にインスパイアを受けたという不思議な世界観で紡がれる情熱的で哲学的な作品。

『Moon』(ムーン)

作:Cyrille Pomès(シリル・ポメ)、発行:Rue De Sevres

思春期の若者たちが他者とどのように向き合っていくのかを真摯に描く。
地中海沿岸のリゾート地。中継アンテナに落雷し、インターネット、電話、ラジオ、テレビ…すべての通信が遮断される。生徒たちを支配していたSNSが絶たれ、彼らはどのように日常生活をアップデートさせていくのか。

『Pocahontas』(ポカホンタス)

作:Patrick Prugne(パトリック・プリューニュ)、発行:Daniel Maghen Eds

ディズニーのアニメ映画にもなったネイティブ・アメリカン、ポウハタン族の女性ポカホンタス。歴史的資料を調べ上げ史実を尊重しながら、入植者ジョン・スミスとポカホンタスのロマンス伝説を下敷きに描く。
17世紀初頭、イギリス船がアメリカ・ヴァージニア港に入港し、入植者が上陸して町を築く。それにポウハタン族は対抗するが、ポカホンタスは両者の関係を取り持とうとする…。

『Shibumi』(渋み)

作:Patrice Perna(パトリック・ペルナ)、画:Jean-Baptiste Hostache(ジャン=バティスト・オスタシェ)、発行:Les Arenes Eds

アメリカの小説家トレヴェニアンによる世界を熱狂させた冒険小説の金字塔『シブミ』のコミカライズ。

ドイツ人の父とロシア人の母を持ち1925年に上海で生まれたニコライ・ヘル。広島の原爆を生き延び、日本軍の将軍から「シブミ」を教えられ、神秘的な暗殺者となる。隠遁生活を送っていたニコライのもとに、巨大組織”マザー・カンパニー”に仲間を虐殺されたハンナが助けを求めにやってきた。

『Soixante printemps en hiver』(冬の60歳の春)

作:Ingrid Chabbert(イングリッド・シャベール)、画:Aimée de Jongh(エメー・デ・ヨング)、発行:Dupuis

外務省主催の日本国際漫画賞で第12回に『L'Obsolescence programmée de nos sentiments』で優秀賞を、第15回に『Jours de sable』で最優秀賞を受賞したエメー・デ・ヨングの新作。

60歳の誕生日。ジョシーの気持ちなど無視して祝おうとする夫や子ども、孫たちをすべてを捨てて彼女は家を出る。子どもたちから連絡は来るものの、ジョシーはトレーラーハウス暮らしをしながら、一人子どもを育てるシングルマザーの女性と仲良くなり、「解放された魔女たちの集い」で運命的な出会いをする…。

この作品は読みました…!
英語版『Sixty Years in Winter』もありますので、気になる方はぜひご覧ください!
こちらの動画でも紹介しています!

『Toutes les morts de Laila Starr』(ライラ・スターのたくさんの死)

作:Ram V.(ラム・V)、画:Filipe Andrade(フィリッペ・アンドレイド)、発行:Urban Comics(英語オリジナル版『The Many Deaths of Laila Starr』はBOOM! Studios)

死の化身は20代のライラ・スターという名の女性になり、インドのムンバイに降り立った。というのもダリウスという名の人間が不死の秘訣を発見してしまうからだ。人間の体を手に入れ死を体験するライラ・スター。果たしてダリウスが不死を手に入れることをライラ・スターは防げるのか。

アイズナー賞2022、ハーベイ賞2022ノミネート作品。

最終ノミネート作品

『Journal Inquiet d'Istanbul』(イスタンブールの不安な日記) 

作:Ersin Karabulut(エルシン・カラブルット)、発行:Dargaud

トルコの漫画家エルシン・カラブルットの自伝。
Drawing on the Edge』というタイトルで英語版も出ている。

民主主義から権威主義体制へとゆっくりと移行しつつあるトルコの動乱と政治的混乱を背景に、イスタンブール郊外の貧しい家に生まれた作者が風刺漫画家としてキャリアを築くまでを描く。

『Le petit frère』(弟)

作:Jean-Louis Tripp(ジャン=ルイス・トリップ)、発行:Casterman

1976年8月、18歳の時、家族で過ごす休暇中のある晩、11歳の弟が車に轢かれて死んだ。45年後、自分や家族の記憶をたどりながら、弟の喪失が家族の歴史に与えた影響を振り返る。自伝的作品。

ACBD批評グランプリ2023最終ノミネート作品。

『Les Pizzlys』

作:Jérémie Moreau(ジェレミー・モロー)、発行:Delcourt

BMWで昼夜を問わずパリを走り回るナタンは、兄弟姉妹を養うためにウーバーの仕事をしている。GPSと一体化しているが故障して、耳をつんざくような虚無感に襲われる。パリからアラスカまで、近代の空から非人間的な地球まで、明日の人間を探す旅。

ACBD批評グランプリ2023最終ノミネート、アングレーム国際漫画祭2023公式セレクション。

『Nettoyage à sec』(ドライクリーニング)

作:Joris Mertens(ヨリス・マーテンス)、発行:Rue de Sèvres

BÉATRICEのヨリス・マーテンス新作。雨の絶えない街で1人暮らしをしながらクリーニング店の配達員をしている冴えない中年男。ある日配達に行った家に大金と死体の山が転がっていて…。

ACBD批評グランプリ2023ノミネート作品。

グランプリ

『Perpendiculaire au soleil』(太陽から垂直に)

作:Valentine Cuny-Le Callet(ヴァレンティーヌ・クニ=ル・カレ)、発行:Delcourt

2016年、19歳のときに作者はアメリカ人死刑囚であるレナルド・マクギースと連絡を取り合うようになる。レナルドはフロリダで死刑を宣告され10年以上投獄されていた。二人の交流を通じてやり取りされた手紙、写真、許された稀少な会合などをもとに、刑務所システムの残酷さ、独房から生まれる友情を激しく心に訴える。

2020年に作者はレナルドとの交流をエッセイ『Le monde dans 5m2』(5平米の世界)として書いている。

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Fnac France Inter BD賞2023の結果はいかがでしたでしょうか?

実話に基づく物語や、小説のコミカライズもたくさんノミネートされていて驚きました!
ACBD批評グランプリやアングレーム国際漫画祭にも選出されている作品もたくさんありましたね。
個人的には読んだ作品エメー・デ・ヨングの『Soixante printemps en hiver』が選ばれていたり、これから読もうと購入していた『De cape et de mots』『The Many Deaths of Laila Starr』がノミネートされていて驚きました。
『Lettres Perdues』が良かったジム・ビショップの『Mon ami Pierrot』や、『Les Pizzlys』は面白そうなので読んでみたいと思います。

お読みくださった方も興味のある作品がありましたら幸いです。

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