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イタリアの漫画祭Treviso Comic Book Festivalで表彰される漫画賞Premi Carlo Boscarato 2023

秋真っ盛り!
過ごしやすい気候でイベントシーズン到来ですね。世界各地でもマンガに関するフェスティバルや漫画賞の話題でいっぱいです。

今回紹介するのはイタリアの漫画賞「カルロ・ボスカラト賞(Premi Carlo Boscarato)」

2023年は9月29日から10月1日にかけて、北イタリアのトレヴィーゾで開催されたトレヴィーゾ・コミック・ブック・フェスティバル(Treviso Comic Book Festival:TCBF)で発表された漫画賞です。

イタリアの漫画祭というとルッカ・コミック・アンド・ゲームズ(Lucca Comics & Games)が世界的に見ても規模が大きく有名です。

ルッカに比べるとTCBFは規模は大きくはないのですが、トレヴィーゾは実は1976年から漫画祭(トレヴィーゾ・コミックス:Treviso Comics)を開催されていて、イタリアの漫画祭としては古い歴史を持つ土地。
どうやらトレヴィーゾ・コミックス自体は経営維持が難しく2003年で終了されたようなのですが、そんなトレヴィーゾの地で2004年に開始され2023年で20周年を迎えた漫画祭がTCBFです!
イタリア人のマンガ好きさんにも有名な漫画祭だそうです。

このTCBFでは、トレヴィーゾ出身の漫画家カルロ・ボスカラトの名前を冠した漫画賞、カルロ・ボスカラト賞が発表されます。

イタリア国内の作品、海外作品、ウェブコミック、アーティスト賞とかなり多岐にわたった賞のようです。

前置きが長くなりましたが、2023年のカルロ・ボスカラト賞が発表されましたので、今回の記事ではノミネート作と受賞作品・アーティストを見ていこうと思います!
※以下、太字が受賞作です。

MIGLIOR FUMETTO ITALIANO(イタリアマンガ部門) 

  • The cyan’s anthem” di Lucia Biagi (Eris Edizioni)
    シアン、マゼンダ、イエロー。肌の色によって階級や人生が決められる世界。そのことに頓着しなかった登場人物たちは…。

  • No sleep till Shengal” di Zerocalcare (Bao Publishing)
    コバニ・コーリング』のゼロカルカーレの新作。2021年春にイラクのシェンガルにあるヤズィーディー教徒のコミュニティを訪問したときのことを描いたもの。

  • Fortezza volante” di Lorenzo Palloni e Miguel Vila (Minimum Fax)
    1933年、謎の航空機が墜落した未解決事件。UFOかスパイか。実際の事件にインスパイアされたレトロSF。コマ割りがグラフィカルで独特。

  • Un nido di nebbia” di Andrea Voglino e Ariel Vittori (Tunuè)
    イタリア人夫婦が南米出身の子どもを養子に迎える。

  • Hypericon” di Manuele Fior (Coconino)
    秒速5000km』のマヌエレ・フィオールの新作。不眠症と精神不安定に悩まされる若いイタリア人女性が、ツタンカーメン王の宝物の展示のためにベルリンを訪れる。英語版も出ています。

受賞作

船が難破し浜辺で目覚めた男は、自分が犬に変身し脳を喪っていることに気づき自分探しの旅に出る。かなりアングラっぽい作品です。

MIGLIOR FUMETTO STRANIERO(海外マンガ部門)

  • Il grande vuoto” di Léa Murawiec (Comicon Edizioni)
    フランス原題『Le Grand Vide』。英語版『The Great Beyond』も刊行。名前が忘れられたら死んでしまう高層ビル群の街で、人気アーティストと同じ名を持つマネルは…。SNS中毒社会を風刺する。

  • Il mondo senza fine” di Christophe Blain e Jean-Marc Jancovici (Oblomov)
    フランス原題『Le monde sans fin』。11月30日には邦訳『だれも教えてくれなかった エネルギー問題と気候変動の本当のはなし』も刊行予定。『三つ星シェフの味付けの魔法』のクリストフ・ブランが描く環境・エネルギー問題。フランスでめっちゃ売れたらしい。

  • La mia vita postuma” di Hubert e Zanzim (Bao Publishing)
    フランス原題『Ma Vie Posthume』。『Peau d’Homme(英題:Man’s Skin)』が話題になったHurbert & Zanzimコンビ。ひどい性格の未亡人の老婆の胸にある日、銃弾が撃ち込まれる。胸に開いた穴を抱え生き続ける彼女は過去を振り返る。不気味なユーモア。

  • Goblin Girl” di Moa Romanova (Add Editore)
    スウェーデンの漫画家モア・ロマノヴァが、出会い系サイトで出会った金持ちの中年男性について描いたデビュー作にして回想録。2021年アイズナー賞受賞作

受賞作

邦訳も出ているニック・ドルナソ『アクティング・クラス』。演技教室に集まる訳アリの人々と怪しい演技教師。
バンド・デシネ翻訳者の原正人さんとやっているポッドキャスト「海外マンガの本棚」でも第2回で取り上げましたね!

  • Entra” di Will McPhail (Tunuè) – ex aequo

New Yorkerのアーティストであるウィル・マクファイルの『In: The Graphic Novel』。人とつながることができない若いイラストレーター、ニックの苦痛と孤独をカラーとモノクロで描く。2022年アイズナー賞ノミネート

MIGLIOR ARTISTA INTERNAZIONALE(海外アーティスト部門)

受賞者

スピン』『アー・ユー・リスニング』の邦訳もあるアメリカのティリー・ウォルデンさんが最優秀海外アーティストを受賞されました!

MIGLIOR ARTISTA (DISEGNO)(作画アーティスト部門)

  • La Came su “Malanotte” (Coconino)

  • Isabella Mazzanti su “Hitomi” (Oblomov)

  • Matteo Buffagni su “Prodigy” (Panini comics)

  • Giorgio Santucci su “Dylan Dog” (Sergio Bonelli Editore)

  • David Genchi su “Analwizards” (Hollow Press)

受賞者

MIGLIOR ARTISTA (SCENEGGIATURA)(シナリオライター部門)

受賞者

MIGLIOR ARTISTA (DISEGNO E SCENEGGIATURA)(シナリオ・作画アーティスト) 

受賞者

  • Lorenzo Mo su “Omnilith” (Eris Edizioni) – ex aequo

MIGLIOR ARTISTA (COPERTINA)(カバーアーティスト)

  • Stefano Zattera su “Fumetti di menare” (In your face comics)

  • Stefano Cardoselli su “Maelstrom” (Green Moon Comics)

  • Paolo Bacilieri su “Materia Degenere 3” (Diabolo Edizioni)

  • Cristiano Spadoni su “Julia – Nel paese dei burattini – Nuova Edizione” (Sergio Bonelli editore)

  • Alice Iuri su “Linus” (B&C)

受賞者

  • Bianca Bagnarelli su “La Revue Dessinée – Primavera 2023” (Revue Dessinèe Italia)

ARTISTA RIVELAZIONE – PREMIO “CECCHETTO”(新人賞)

受賞者

MIGLIOR COLORISTA(カラリスト)

  • Sergio Algozzino su “Dylan Dog Color Fest” (Sergio Bonelli Editore)

  • Fabiana Mascolo su “Alice per sempre” (Saldapress)

  • Walter Baiamonte su “Mighty Morphin Power Rangers / Teenage Mutant Ninja Turtles” (Edizioni BD)

  • Giovanna Niro su “Dylan Dog / Batman” (Sergio Bonelli Editore)

  • Francesco Segala su “Dylan Dog Color Fest” (Sergio Bonelli editore) e “La Palude” (Edizioni BD)

受賞者

  • Adele Matera su “Eternity”, “Dragonero” (Sergio Bonelli Editore)

MIGLIOR REALTÀ EDITORIALE ITALIANA(出版社)

受賞者

MIGLIOR FUMETTO WEB(Webコミック部門)

受賞作

MIGLIOR FUMETTO PER UN PUBBLICO GIOVANE(子ども向け部門)

受賞作

PREMIO “ELENA XAUSA” TRA FUMETTO E ILLUSTRAZIONE(Elena Xausa賞)

受賞者

宇宙探検隊がとある惑星に落下する。そこでは記憶がすべて閉ざされ、救援の手も届かない。唯一の脱出方法は音楽や歌を通して助けを求めること。
グラフィックミュージック、イラスト付きポッドキャスト、コミックストーリーが一体となった「聞くコミック」。
どんな作品なのかかなり気になります…!

~*~

アーティストさんの賞についてはほとんど説明ができずに列記のみとなってしまいましたが、こんなにたくさんのフメッティ(イタリアコミック)が出ているとは……!
最近個人的にフメッティ押しでしたが、全然まだまだですね。
イタリアという土地柄、バンド・デシネに近いようなものから、アメコミに近いようなもの、オルタナティブ・コミックまで、フメッティのバラエティの豊かさをしみじみと感じてしまいます。
シナリオ、作画だけでなく、カバーアーティストやカラリストの賞があるのはアメコミに近い部分も感じますね。
出版社の賞があるのも興味深く、メジャーな漫画出版社から、かなりオルタナティブというか個性的なところまでたくさんの漫画出版社があることもわかりました。

なかなかフメッティの情報を得る機会が少ないので、とても興味深いです。

ちなみにイタリアでは多分、最大になるのではないかと思われるルッカ・コミック・アワード2023も現在ノミネート作品が発表されていて、11月2日に発表のようです。
またラインアップが異なり、それはそれでとても面白いですね。

こちらも発表されたらまた記事にまとめてみたいと思います!

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