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コラム街

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ここはコラムしかない場所、「コラム街」。 コラムコラムコラム……どこを見てもコラムしかありません。なぜでしょう?  企画力をみがく講座「企画でメシを食っていく」で、 受講生…
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#小説

編集者って、必要ですか?(小説編集者の「先生には言えない話」⑥)

ここ10年くらい悩んでいる。 編集者って、出版社って本当に必要なのだろうか? 出版社に限らず、テレビ・音楽・映画など、 作品を世に出す業界(以下メディアと呼びます)は、ずーっと勘違いしてきたのだと思う。 自分たちは、才能があるクリエイターを「発掘」し「育て」、「プロデュース」する力があると。 だから作品から得られる収益をもらうことができると。 そんな風に、ちょっと偉そうにしていたところがあるのではないかと思う。 でもそれは大いなる勘違いだ。 もちろん、優れた編集者や

名作を生み出すエネルギー(小説編集者の「先生には言えない話」④)

好きな仕事の1つにサイン会がある。 読者の方の顔を見ることができるから。 「ありがとうございました」とお礼を伝えることもできる。 先生も楽しみにしている。 感想は手紙やネットで目にすることはできるものの、 直接感想を聞けるのはレアだからだ。 編集者のサイン会での仕事は、あまり難しいものではない。 先生がサインしやすいように本を開いたり、 落款(ハンコ)を押したり、写真撮影をしたりする。 手は動かしつつ、先生と読者のお話を、ニコニコと聞いている感じだ。 熱心な読者の方だか

罪作りな文学賞(小説編集者の「先生には言えない話」②)

先日、直木賞のパーティに行ってきた。 直木賞は影響力の大きな賞。公的な賞のような印象もあるが、事実上文春という私企業が主催している賞である。だから候補作には必ず文春の作品が入っている。 2作入れてくる回も多い。なんだかズルいような気もするが、公的な賞ではないので、自由なのである。 もちろん選考委員の先生方は完全に中立なので、候補になってからは作品の勝負となる。 そして直木賞は罪作りな賞だ。 候補作を事前に公表するので、先生は選考会当日、ヤキモキしながら待つことになる。

小説の取材をするということ(小説編集者の「先生には言えない話」①)

編集者の大事な仕事として、取材がある。 取材のオファーをし、当日先生をアテンドする。先生ご自身もメモを取るが、僕の方でも要点をまとめて後でお渡しする。 これが結構楽しい。調香師、元自衛隊員、外科医、普段会えない珍しい職業の人と会えるのだ。 相手からきいたちょっとした言葉からストーリーが膨らんだり、取材先で見た小道具などを描写することで作品のリアリティーが増したりするから、取材は重要だ。 ある時、小学生を主人公にした作品のために、子ども関係の施設を取材したことがある。有意