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創作怪談

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記事一覧

ゆうえん、ちの、かいだん。3

べっこう飴 私がまだ小さかった時に体験した話です。 母と妹と3人で出かけた遊園地にはたくさんの屋台が出ていました。 やきそば、わたあめ、かき氷……。 私は1件の屋台が気になりました。 それはべっこう飴の屋台。 お姉さんの指先から作りだされる、綺麗な色付きガラスのようなべっこう飴。 飴は小さくてまるい物という認識しかなかった私はすぐに夢中になりました。 母にべっこう飴が食べたいとせがみ、棒付きの小さいうさぎのべっこう飴を買ってもらいました。 突然、妹がトイレに行きたいと言

テケテケ

(やばい! 今日も忘れた!) 学校に宿題を忘れてきたことに気がついたぼく。 実はここのところ、毎日のように忘れ物をしている。 そろそろ連絡帳に「忘れ物が多いようです」って書かれてしまうかも知れない。 (そんな事になったら、ママに怒られる) 時間は夕方、先生たちはまだ学校にいるはずだ。 (よし、取りに行こう!) ぼくは急いで学校に向かった。 学校に到着した頃には、すっかり日も暮れていた。 (あれ?) 校舎の二階の廊下の窓に誰かがいる。 (女の子だ) 窓から顔を出しているその子

ゆうえん、ちの、怪談。2

駅楽しい飲み会は時間が過ぎるのも早い。 鈴木さんが慌てて飛び乗ったのは最終電車だった。 運良く座席に座る事の出来たことや酔いも手伝って、鈴木さんはうとうとと寝てしまう。 ピンポン、ピンポン ドアが閉まる音で鈴木さんは目を覚ました。 どうやら電車はどこかの駅に着いて発車したばかりらしい。 窓ガラス越しに流れるホームから見える「登戸」の駅名。降りる駅はまだ先だ。 寝過ごしていない事にほっとしながらも、鈴木さんはすぐに奇妙な事に気付く。 この路線は都内から神奈川の郊外を結ぶ通勤

オフ会【ゆうえん怪談・語り】

みなさん、今日の会はいかがでしたか? 「こういった怪談を話したり、考察したりする会に初めて参加した!」って方も結構いらっしゃるかと思います。 私は昔から怪談や怖い話が好きで、こんな感じの怪談話の交流会に参加していたんですよ。 そこで同じ怪談好きの参加者と怖い話を話したり、聞いたり。 今からお話するのはそんな会で知り合った人の体験した話です。 その人は仮に小林さんとしておきましょう。 小林さんは都内のITメーカーに勤務している30代の女性です。 小林さんと私が出会ったのは、とあ

着せ替え人形【怖い小話】

葵の姉は名付けた着せ替え人形を持っていた。 しかし、成長するにつれ、人は大切なものが増えていくものだ。 それと同時に、不要なものも。 人形遊びをしなくなった姉は引っ越しの際に着せ替え人形を捨てた。 ゴミ袋に入れられる着せ替え人形。 (なんだかかわいそう) 葵がそう思った瞬間。 着せ替え人形と目が合ったような気がして、少し怖くなった。 新しい家で葵は夜中にふと目が覚めた。 どこからか、歌声が聞こえてきたからだ。 「葵ちゃん。私は今お姉ちゃんのお部屋にいるよ」 「ベッドにいるよ

野辺送り【怖い小話】

私の母は、とある山奥の集落の出身だ。 集落には大きな廃寺があって、その敷地に小さな御堂があった。 幼い頃に一度だけ、曾祖母に連れられてその御堂に行ったことがある。 荒れ果てた境内の竹藪の奥深くに御堂はあった。 御堂は地面から高い位置にある、高床式倉庫の様な板張りの小屋だ。 初めて見る御堂の中。 10畳くらいの広さがあるが、真っ暗で電気もライトも無い。 土足厳禁らしくスリッパが置いてあるが、履くのもためらうくらい薄汚れている。 祖母に倣って入口で靴を脱いだものの、なんだか気味

ゆうえん、ちの、怪談。1

■ミラーハウス 子どもの頃、不思議な体験をした事がある。 その日は両親とお出かけで、行き先は私がリクエストした遊園地。 ジェットコースターや観覧車、メリーゴーランドなどをひと通り楽しんで、私はミラーハウスに向かった。 ミラーハウスは。鏡張りの通路を歩くだけ。 入口も出口もひとつの安全で単純なアトラクション。 「子ども1人でも大丈夫だろう」 両親は私を送り出した。 たくさんの私の姿が映し出される通路。 ゆっくりと歩いても、すぐに出口。 (もう終わり? つまんないなぁ) 私は名

生田緑地【ゆうえん怪談・語り】

多摩区に住んでいる人で、生田緑地を知らない人はいないと思います。 プラネタリウムがあったり、岡本太郎美術館があったり、民家園があったり、多摩区民の憩いの公園ですよね。 実はここ、怖い話が結構ある怪奇スポットなんですよ。 例えば民家園の古民家。 これは実際の建物を解体して移築しています。 長い年月、人々の生活を見守っていた古い家には、色んな人々の想い入れも強い。 なので一緒についてきちゃうんですよ……何かが。 古民家園の近くで着物姿の人が見えるなんて言うのも、それなのかも知れま

ゆうえん、ちの、怪談。0

ゆうえん、ちの、はなし。 ※この作品は噂を元にしたフィクションです※ #放送  川崎市は夕方になると、どこからともなく音楽が流れる。  これは防災無線の定期試験として放送をしている、メロディチャイムというものだ。  ただ、登戸付近ではごくたまにメロデイチャイムに混ざって妙な音声が聞こえるらしい。 「ザザッ……本日、は……ごライエン……ありがとうゴザイ、まシタ……ザザッ……」  かつてこの地で営業していた遊園地。  もしかしたら、廃園になった事にまだ気付いていないのかもしれ