「自治体と弁護士の連携術」#2

 「政策法務」は多義的な言葉である。「戦略法務」とかと同じように、人によって込められている意味が異なっている。
 本書の中でも「政策法務」に関して言及があったが、任期付公務員として自治体に入る意義を考える上では、自治体が国に依存せずに自治体自身で法令解釈していく、という意味の「政策法務」が重要となると思った。

ある事務について、なぜそのような扱いをしなければいけないのかについて、現場では、根拠条文などにさかのぼって考えることはあまりないように思われる(場合によっては、根拠条文などはじめから存在しておらず、単に、「今までそうしてきたから」という慣例でそのような扱いをしているに過ぎなかったりする。このような態度が行き過ぎると、「今までそうしてきたから」、未来永劫、この運用は変えられないのだ、という硬直したことになってしまう。)。そのような点を「マニュアル行政」と揶揄される

 自治体は、機関委任事務の遂行のために国に問い合わせていれば足りていたのに、分権改革の実施にともなって、自治体自身が自分で法務の処理をしていかなければならなくなった。しかし、そのための能力が自治体にはまだない、というのが現状である。
 この現状を踏まえると、任期付公務員として弁護士が自治体に入ることの意味は、自治体の法務能力を高めることにあるだろう。

ある問題を解決しようとするときには、様々な選択肢の中から問題解決に適した目的達成手段を選び取る作業が基本となる。……「押したり引いたり」を繰り返しながら、政策目的と目的達成手段を洗練させていくわけである。そもそも条例にすべきか、それとも行政指導でよいのか、解釈変更をするだけでよいのか。

 たとえば、海の家のクラブ化が問題視されている。

 海の家に対して、規制を及ぼすのが妥当なのか、行政指導で足りないのか、既存の法令で対応できないのか、条例をつくるとしてどう規制するのかといった問題が山積みのはずである。(※ 鎌倉市は条例によって規制したようだが、鎌倉市は任期付公務員を採用している自治体の一つである。)

 こうした社会問題が浮上した局面において、任期付公務員は法令にさかのぼってどこまでやれるのか、法令の文言と趣旨からぎりぎりと検討するはずだ。そのときに、法令解釈の手本を自治体職員に示して、自治体独自の法務能力を向上していくというのが任期付職員の役割ということになるだろう。