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書評講座 Vol. 1

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課題書: 1)『エルサレム』- ポルトガル、ゴンサロ・M・タヴァレス著、木下真穂訳、河出書房新社、2)『キャビネット』- 韓国、キム・オンス著、加来順子訳、論創社、3)『クィーン… もっと読む
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2023年2月の記事一覧

【書評】正常と異常の境目とは 『キャビネット』キム・オンス著|加来順子訳

ものすごく足が速ければオリンピック選手で、ものすごく手が長ければビックリ人間だ。才能とは、個性とは、体質とは、どこまでが正常で、どこからが異常なのだろうか? キム・オンス著『キャビネット』は、正常と異常、現実と虚構の境界をぼかして読者を煙に巻く。 〈ポスト人類〉相談窓口 主人公のコン・ドックンは〈安定が一番〉という母の遺言に従い、とある公企業になんとか就職を果たした。だが、百三十七倍の倍率を突破して、いざ職場に行ってみれば、仕事とよべる仕事はほとんどなく、待っていたのは〈