満員電車
高校まで田舎に住み、大学もやや田舎のキャンパスに自転車で通える土地に住んでいた身としては、東京の通勤電車に憧れを抱いていた。
東京で就職できることが決まった時は、何よりも都会で働けることへの喜びがかなり大きかった気がする。
子どもの頃、東京出身の子どもがいるとはにわかには信じがたかった。夏休み中、テレビを見ると都会の子どもたちがカメラに映り込む。同じ子どもなのに、全く親近感を感じなかった。別の世界の話なんだろうなと思っていた。
そんなことを考えていたあの頃から10数年経ち、なんとその東京に住んでいる。当たり前だが、東京出身の子どもは居るし住んでいる人もちゃんといる。
4月。最初の出勤日、電車に乗り込む。
テンションを上げる曲を聴きながら、窓越しに見る東京の街並みは憧れそのものだった。
ビル、人、車。
何かが動くと、別の何かが空いた空白を埋めるように動いていく。忙しない東京の雰囲気にワクワクした。
それから半年が経ち、10月になった。
4月のやる気に満ちた気持ちは少しずつすり減っている気がする。
4月と変わらず、自分を鼓舞する曲を流しながら今は目を閉じて満員電車に揺られている。
新しい一日が始まる。
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