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7.「お馴染みのあいつ」

「おお!来たのか!!」

「ああ、あの時の変な奴か!」
的な怪しいグレーな響きがあったかと思う。


深夜11時半頃の夜行バスに乗って翌5時頃に東京に着く。
その後、中古CD屋巡り等をして、「東京ってあったけーなー」とのほほんと過ごしていた。
この時の自分と来たら、大都会に圧倒されて、完全に風景的にも浮いた存在だった思う。
高層ビルをボーッと眺めている麦わら帽子を被った虫取少年がいたらおそらく自分だったと思う。

しかし、東京は人口密度がエグい。
あんな小さい東京都に尋常じゃない人が蠢いて、お互いがお互いを避けながら道を行き来し、店も比較的狭い。
こんな環境でよく生きられるなと率直に思った。
極端に自分のパーソナルスペースが狭い。
そういう環境で育つとスペースや相手との間合いであったり、器用に生きていけるようになるのかなと思った。
地方の田舎人よりもテトリスやらせたら絶対上手いと思う。


後楽園ホールに来ていた。
試合開始前に誰しもいないリングには必ず誰かがリングで見張っている。
素人であるお客さんに気安くリングに触らせちゃいけない為だ。

「◯◯さん!」

「おお!来たのか!」
とちゃんと覚えていてくれた。

道場に殴り込んでから約半月、今度は実際にも見に行くようになった。

そして、全試合終了後にはあちらがリング撤去で忙しいにも関わらず「面白かったです!また来ます!」
とダメ押し。

こうやって自分という存在の押し売りをエスカレートさせていった。
全ては「あいつは本気だ。」
と気付かせる為だった。

自分みたいな何も持たない人間はまずは「お馴染みのあいつ」にならなくてはいけない。
自分なりには城壁から外堀を埋めて内堀も埋めて、城門に辿り着いた感覚だった。
ここからは「ああ、あいつか!」
という人を増やして、中に入れてもらうというイメージだった。

そして、まだまだ攻め手を緩める事無く、次のプランがまだまだあった。


そんな時に公式サイトから発表があった。





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