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「工場を辞める」
「パキン!」
作業中に使っていた一本のドリルが折れた。
「仕事辞めよう!」
元々もう仕事に対する熱意も何も無かった。
高卒で入った工場仕事には嫌気がさしていた。
そんな悶々とした日々を過ごしていた時に痛快な快音一発がバックスクリーンに飛び込んだ。
そしてドリルと共に心も折れた。
「プロレスラーになる!」
冴えない工場人からプロレスラー、「フリーターが大統領選に立候補」と同等の響きだ。
元々プロレスが大好きで、プロレスは見る物と認識していたが、いつしかなりたいという願望が芽生えていた。
よく、昔から体を鍛えていて、レスリングや柔道、格闘技をやっていて、満を持して入る人がいる。
ようするに下準備もしっかりして将来のビジョンが見えている人達だ。
ただ、自分にはそんな物微塵も無い。
「一度きりの人生だからレスラーになる!」
今思えば恐ろしい話で、若さとは残酷だ。
今の自分なら当時の自分には大きな病院の精神科を紹介したい。
で、ところで、
会社を辞める必要はあったのだろうか?
結論を言うと無い!
正社員として働き続けてれば良かったのだが、
「いつか辞める前提で働けるか!」という
おめでたい思考で退社、アルバイトを始めた(アルバイトという物にも失礼)
ただ、それからは何か気分が清々しかった。
やっと自分の意思で人生を選択出来た気がした。
ところで、激動の日々で肝心の本題が霞んでいたが、
「レスラーってどうやってなるの?」
・・・
これはあまりに痛恨だ。
おでんで好きな具は大根だ。
海を渡る為のその方法から考えることになった。
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