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ロシアによる欧州諸国へのガス供給の停止 ―エコノミック・ステイトクラフト論から

本日の日経新聞の記事で

ロシアが東欧2カ国への天然ガス供給を27日に停止した。欧州側はエネルギーを武器にした「脅迫行為」と猛反発し、ロシアと西側諸国の対立は経済戦争の色彩も帯びてきた。同日の欧州の天然ガス相場は一時2割急伸し、インフレ高進が欧州経済を不況に追い込むリスクが高まりつつある。
『ロシアのガス遮断、欧州「脅迫」と猛反発 価格2割上昇』日経新聞2022年4月28日記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR27FI30X20C22A4000000/

このように、ロシアはポーランドとブルガリアに対して天然ガスの供給を停止した。その理由としては、「通貨ルーブルでの代金支払いに応じなかった」こととしているが、実際はウクライナに支援している国家に対してのエコノミック・ステイトクラフトである。
エコノミック・ステイトクラフトとは、国家の影響力行使の手段として経済を使うというものであり、1980年代にデイヴィット・ボールドウィンが定義化した。しかし、影響力行使の手段として経済を使うのは今に始まったことではない。これまで何度も経済制裁はその手段として用いられてきた。
現在、欧米諸国がロシアに対して経済制裁を行っているが、ロシアも同様に制裁返しを行っている。ここで問題なのは、この手段がどこまで妥当であるかということである。欧州諸国にとって天然ガスの供給停止は短期的にはかなり痛いが長期的に見れば他のエネルギーに変えていくことで解決することができる。しかし、エネルギー分野以外の産業がそこまで大きくなく、経済の多くがエネルギー産業頼みであることからロシアは長期的にはとてつもないダメージを被ることになるだろう。この場合、エコノミック・ステイトクラフトは欧米諸国からものの方が効果が高いと考えることができる。
最後に、ここまで国家の影響力行使の手段としての経済を考えてきたが、ロシアが切羽詰まって核兵器を使用するということがないようにしなければいけない。ロシアが限定的な核兵器の使用と行った場合に、アメリカは核の報復を行うのか、これはまた核抑止論の議論になるので別の会で書くことにします。
                               終わり

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