月虹

 12月は毎年、お別れを盛大にされるような遣り場のない淋しさを感じる。
 それは、1月から始まった1年が、12月で終わってしまうからかもしれない。
 枯れ葉たちの会話が聴こえるからかもしれない。
「寒いなぁ」
「なぁ」
「こんなに寒かったっけ」
「冬だからな」
 林にカサカサと凍えそうな風が吹きこむ。
「今年はいつもと違ったよな」
「ん?」
「カラスのトーンが言うには、街に出る人間が少なかったらしいんだよ。ここだって、遠足の子どもたちや焼き芋パーティーのサムが来てねえのに、冬になっちまった。ほら、いつもと違う」
「ああ、確かにな。サムが来なかったおかげで焼かれずに済んだけどな」
月明かりを背にして、遠くでモモンガが翔んでいる。
「いつもと違うのが当たり前になって、時代がつくられるんだろうな」
「急にどうしたんだよ」
「……」
「なぁ、どうしたんだよ」
「……」
 枯れ葉たちは次々と眠ってしまった。
 ふと空を見上げると、フクロウが優雅に飛んでいた。
 月虹へと何の迷いもなく、飛んでいた。

(了)





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