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たまった小銭に泣かされる

 私は買い物をして釣り銭を受け取ると、レシートといっしょにズボンのポケットに突っ込む。で、帰宅してから紙幣は財布へ、硬貨は金種別に分けてそれぞれの容器に入れる。容器といっても手ごろなサイズの空き瓶や空き箱にすぎず、それを本棚の隅などに置いたものだ。

 そして小銭がたまる。どのくらいの期間だったか覚えていないが、昨日数えてみたら以下の通りの内訳だった(硬貨の数の単位は枚でも個でもかまわないらしい)。

 1円 1,420個 1,420円
 5円 363個 1,815円
 10円 756個 7,560円
 50円 193個 9,650円
 100円 436個 43,600円
 500円 102個 51,000円
 合計で115,045円だ。

 小銭と言えども数がまとまればばかにならない(あたりまえ)。この小銭、普段は意識していないから、なんだか儲かったような気分になった。

 硬貨を数えるときは10個でひと山にし、その山を並べていく。並べた山の高さがそろっていれば10個だという確認になるし、頭はたいして使わない。
 全部で3,270個も数えたうえ、利便性を考えて100個ずつ封筒に入れたから時間がかかった。
 ただし、単純作業だから私の頭でも余裕があって、数えながらあれこれろくでもないことを考えたり妄想したりした。〝次回の記事は何にしようか〟〝フォロワーの誰それさんは何歳くらいだろうか〟〝どんな顔だろうか〟〝冷蔵庫にビールまだあるかな〟などと。

 ところで、大変な思いをしてせっかく数えたけど、小銭のままでは思うようにつかえない。「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」というのがあって、つかうときは1回につき額面の20倍までと規定されているからだ。例えば、100円硬貨なら(20個で)2,000円が限度だ(受け取る側が承諾すれば何個でも問題なし)。

 つかい方に制限があるから、この儲けた気分の硬貨をそのまま持って、にやにやしながら夜の街へ繰り出すなどということは現実的には無理。
 そこで、いったん銀行の預金口座へ入金して、あとで引きだすことに決めた。なんだかマネーロンダリングみたいだが正当な方法だ。

 しかし、銀行にもなんらかの制約があることを思い出した。そこで、取引のある某地銀に電話で問い合わせた。すると、やはり制限があった。
 窓口へ持ち込む場合には個数制限があり、それを超えると手数料を取られる(手数料の額は忘れた)。おいおい、預金して手数料を取られるのかよ、と、いくら私がお人好しでも驚いた。その一方で、銀行側が付ける預金利息(預金利率)なんて限りなくゼロに近いじゃないかと。

 電話口の女性行員は、ATMなら多少は制約がゆるいと言う。それでも1回に100個までしか入金できず、それ以上の場合には個数に応じて操作を繰り返さなければならない。

 厄介だが、ものは試しと覚悟して銀行へ行った。
 まずはATMに通帳を入れ、とりあえず10円硬貨100個を投入口へ入れる。スマホも腕時計もなかったから時間を計ることはできなかったが、通帳が出てくるまでに2分以上かかったように感じた。

 1回目が終わってATMから通帳が出てきたので取った。しかし、「通帳をお取りください」という表示がなかなか消えない。壊れたのかもしれない。
 係を呼ぼうと思ったが面倒なので隣のATMへ移動し、2回目の手続きをした。入金額の確認画面が表示されたが、1個分足りない990円だった。よく見ると投入口に1個あった。汚れか何かが原因で機械に拒否されたのだ。

 700枚ちょうどしか持って行かなかったから余分の10円はない。990円のまま確認ボタンを押した。
 そのうちに、私の後ろに数人が待っていることに気がついた。自分に厳しく他人に優しい私は、3回目以降を断念して銀行を後にした。

       ◎    ◎    ◎

 今日は土曜日だ。土曜ならATMもすいているだろうと思い、昨日に続いてふたたび銀行へ行った。
 特にすいてはいなかったが、とりあえずあいていたATMに通帳を入れた。その段階で、「土曜日は紙幣のみで、硬貨は取り扱いできません」という紙が貼られていることに気がついた。唖然呆然愕然。なんてこった。
 昨日に続き、無念の思いで銀行を後にしたのだった。

 こんな調子で銀行通いをするのはうんざりだ。まして、1円硬貨などは1回の預け入れでたった100円だ。手もとにある1,400個の1円硬貨なら14回も操作しなければならない。
 いっそどこかに寄付しようか。いや、寄付された側も迷惑か。

 皆さん、硬貨はあまりためないで処分することをおすすめします。

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