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痴情の空論

〔解説〕

 このことわざと語呂がよく似ているうえ、意味もやや似たことわざに「机上の空論」がある。「実際には役立つことのない、頭で考えただけの計画や議論のこと」という意味だ。

 本題の「痴情の空論」は、もうお察しのことと思うが、要するに痴話喧嘩である。夫婦だけでなく、恋人同士や不倫の間柄などでの痴情も含まれる。
 また、つかわれる場所が航空機内に限定されることわざに「機上の空論」がある。多くの場合、空論の内容が航空機に関することであるのが特徴だ。
 これらをひとまとめにし、以下に架空の事例で示す。

〔さらに解説〕

「このエアバスって重さが600トン近いんだってさ。それに800人以上乗ってるんだよ。なんで飛べるんだろうね、こんな重いのが。ハワイまで燃料もつのかね」
「いまどきバカなこと言ってないでよ。笑われるわよ」
「心配なんだからしかたがないじゃないか。俺、着地するときがいちばん怖いんだよ」
「着地? 着陸でしょ。なにが着地よ。体操じゃあるまいし」
「いやに突っかかるじゃないか。おまえ、このあいだ映画見に行ったけど、誰と行ったんだよ」
「え? 今ごろなによ。同じ課の凡子って言ったでしょ」
「いま、ちょっと声がうわずってたぞ。あの晩のおまえ、帰宅したときいつもと違う匂いがしてたぞ」
「あなた、鼻もばかね。ばかげたことを言ってると飛行機が落ちるわよ」
「俺はおまえを愛してるんだ。おまえは美人でナイスバディだし、周りの男が黙ってないってこと、自分でわかってるんだろ?」
「え、疑ってるわけ? だったらあたしも言わせてもらうけど、あなただってけっこうイケメンだし、もてたからやりまくってたでしょ」
「いやいや、そんなにはやってないよ」
「語るに落ちるとはこのことだわね」
「待ってくれよ。結婚前のことなんだからいいじゃないか」
「まあいいわ。おたがいさまだから。この話はこれでおしまいにしましょ」

 とまあ、こんなぐあい。なんのこっちゃ。

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