見出し画像

木枯し紋次郎を偲んで三日月村へ

 先日、嬶(かかあ)天下をテーマにした記事を投稿後、妙に木枯し紋次郎が懐かしくなり、紋次郎の故郷である〝三日月村〟(群馬県太田市)へ行ってきた。
 木枯し紋次郎は、人気作家笹沢佐保氏によって生み出された股旅物時代小説のヒーローで、長い楊枝がトレードマークのニヒルな渡世人だ。いまでは知らない世代がかなり多くなっているだろうけど。
 小説は1971年からスタートしてヒットし、後に中村敦夫主演でテレビ化、菅原文太主演で映画化もされた。

 これらの大ヒットを受け、当時の藪塚本町(現在は太田市)の有志がテーマパークとして誘致、1980年に誕生した。
 渡世人紋次郎が生きた時代は江戸時代の天保年間という設定で、三日月村内では現代の通貨〝円〟は使えず、両替所で寛永通宝に両替してから使用するなど、雰囲気づくりが演出されている。

村(パーク)内に両替所があり、円を寛永通宝に交換する。



 三日月村の場所は街中ではない。郊外の田園地帯で、小さな里山のふもとに立地する。駐車料金600円(時間制限なし)を払い、わずかなのぼりの歩道を歩いて行って入園する。
 受け付けで入園料600円を払う。園内には「怪異現洞」「不可思議土蔵」「絡繰屋敷」など、見たり体験したりできる施設があるが、これらの料金は含まれていない。

三日月村の入り口。門を入ってすぐ左手に受け付けがある。
門を入って左手の受け付け。「表関所」と表示してある。両替もできる。
写真左の「峠茶屋」は休業中だった。

 上の写真の「峠茶屋」には「焼まんじゅう二串五文」という木札が掛けられていた。訪れたときは休業中だったが、まだシーズンオフで客足が伸びないからなのか、それとも月曜日だったからなのか。


「峠茶屋」から歩を進めるといくつか建物が見えてくる。
小さな注連縄が付いた宮らしきものがあった。賽銭箱もある。井土ではなさそうだ。




 下の建物には「かかわりーな」と書かれた看板が掲げられていた。「かかわりーな」の横には「木枯し紋次郎記念館」と書かれている。

屋根の補修中なのかブルーシートが張ってある。
自由に中へはいれる。内部はこんな感じ。ひな人形が飾ってあった。




 さらに進むと、体験ができる見どころが3か所現れる。
 下の写真の3棟のうち中央が受け付けで、女性スタッフが一人で待機していた。女性は「絡繰屋敷」の案内係も兼務している。
 写真左の、門のようなものは「不可思議土蔵」への通路入り口。

「絡繰屋敷」の看板がやたら目立った。もっと控えめがいいと思う。

 「絡繰屋敷」には七つの部屋があり、隠し戸や隠し階段などが設けられている。受け付けにいたスタッフがついてきて、「さあ、この部屋にはどうやってはいればいいかわかりますか」などと質問しながら案内してくれる。

「絡繰屋敷」の内部は撮影禁止。絡繰りがばれてしまうからだろう。



 次に行ったのが「怪異現洞」。雰囲気はお化け屋敷だが、怪異という名前ほどではない。ここにはスタッフの案内はつかない。
 「どっちへ行ったらいいかわからなくなったら、床に描いてある足のマークを目印にしてください」などと〝アドバイス〟してくれた。

右の穴からはいって左から出てくる。



 最後(順番は自分で決められる)は「不可思議土蔵」。自然の傾斜を利用して造られた土蔵で、かなり傾いている。

写真は一応水平にかまえて撮ったのだが。
写真左右の風鈴を見れば、写真が水平であることがおわかりだろう。

 こんなものはへいちゃらだよ、なんて思っていても、実際にはいってみると平衡感覚が混乱する。たかが視覚へのいたずらなどと侮れない。

土蔵は二棟ある。




 少し下ったところへ別の見どころがあるというので移動する。
 下の写真は「居付茶屋」。居付というのは本建築のことで、江戸時代には経営者と家族はいっしょに住んでいたそうだ。しかし、妻や嫁、娘は店に出てはいけないという決まりだったという。

茶屋は客を宿泊させてはいけなかったという(旅籠屋保護のため)。



 そば屋へ寄って昼食。

「山菜かけそば」六文。




 そば屋のそばに(しゃれではない)みやげ店と両替所があった。みやげ店には写真や絵馬が飾ってあった。

左の絵馬は大和田伸也さん、右の絵馬は中村敦夫さん。
そば屋の隣には神社もあった。



 下の写真は「御旅籠上州屋」。
 当時の旅籠屋は一泊二食付きで、昼食は出さなかった。客間は二間か四間しかなく、馬を連れている客が多かったために馬小屋がついていたという。

二階にいるのは観光客ではない。人形だ。
写真では切れてしまって写っていないが、建物の手前側(左端)に馬小屋が設けられている。



 この建物が〝紋次郎の生家〟という設定。こういうのをじっくり見ていると、紋次郎が実在の人物だったような気がしてくる。

これから旅に出るのだろうか。長い楊枝をくわえている。



 というぐあいで三日月村をひとめぐりしてきた。
 三日月村が賑やかになるのはやはり春から秋の間だ。私が今回行った時期はまだ閑散としていた(月曜日ということもあるのでなおさら)。

 テーマパークとしては規模が比較的小さく、テーマの性質からしても全体的に地味であり、決して華やかではない。これから行こうと思うかたは、くれぐれも遊園地などの華やかな雰囲気と較べないようにしていただきたい。しっとりとした、江戸時代の静かな村を楽しんできてください。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?