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相手にとって不満はない

〔解説〕

 このことわざはいかにも昔からあったように思えるがそんなことはない。今朝できたばかりである。
 ほんとうに古くから親しまれている「相手にとって不足はない」ということわざと、意味も語呂もよく似ているため、混同することがよくあるので注意が必要である。

 古くから知られる「相手にとって不足はない」は、「相手にもかなりの力があって、競ったり闘ったりすることに申し分ない」という意味だ。
 一方、できたてほやほやの「相手にとって不満はない」は、「つきあう相手の資質が恋愛や結婚の対象として自分の望みどおりであり、不満はない」ということを表している。

〔さらに解説〕

 例えば、何から何まで平均的な凡子さんが、恋人や結婚の相手として理想とする「背が高くて細マッチョで、めまいがするようなイケメンで、しびれるほどセクシーで、とろけてしまいそうな美声で、腰が抜けて立ちあがれなくなるほど優しくて、尿漏れするくらい高学歴で、年収が一千万円以上の男性」であった場合、これがすべて満たされていれば「相手にとって不満はない」となる。

 しかし、世の中はそんなに甘くはない。そもそも、凡子さんの理想を満たすようなきびしい条件を備えた男性は、存在そのものがきわめて少ない。
 そして、運よくどこかにいたとしても、まずは出逢う可能性がおそろしく低い。サマージャンボを買って一等を当てるほうが確率が高い。
 さらに、運命の神のうっかりミスによって出逢えたとしても、その男性が凡子さんとつきあう気になるか。この段階では、サマージャンボの一等を二年連続で手にするほどの難題となる。

 結局、凡子さんは理想像のレベルをかなり下げることになる。「中肉中背で人並みな顔、年収300万円以上で普通自動車運転免許があれば可」くらいまで落とす。そうすれば、「相手にとって不満はない」と、胸を張って言えることになる。浮き世はきびしいのだ。

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