見出し画像

戸袋の中にスズメの巣

 私の家に巣を作るのはツバメだけではない。スズメも巣を作る。2階の窓の、雨戸の戸袋の中という変わった場所に。

 いったん話がそれるが、戸袋という名前は変ではないか。あれはどう見ても袋ではなく、どちらかといえば箱だ。だから「戸箱」といったほうが適切だと思うが、なぜ戸袋なのだろう。

 さて、スズメが巣を作った戸袋は、いつもは人がいない部屋についていたものだったため、台風でも来ない限り雨戸を開け閉めすることがなかった。だから戸袋の中はいつも平穏で、当然ながら風雨の影響もない。スズメはもっけの幸いとばかり、マイホームを新築したに違いない。

 私が戸袋の中の巣を発見したときには、スズメの一家がまだ暮らしていた。もちろん追い出すようなことはしなかった。子育てを終えた一家が巣を離れたのを確認してから、枯れ草や藁でできた巣を掻き出した。
 それに懲りてもう来ないかと思ったが、よほどその戸袋が気に入ったのか、その後も何度か巣を作った。

 スズメは昔から、人里にはたいてい棲んでいると言われていた。反対に、人間が住んでいないところにはスズメもいないと言われるほど、人間とは相性がいい。
 そんなわけで、本来はツバメと同じく自然界に巣を作るはずだったスズメも、人間が作った構造物に巣を作ることが珍しくなくなったようだ。

 ところで、スズメが巣を作った戸袋のある部屋を、家人が常時使うことになった。そのときになってわかったのだが、スズメが動くたびにガサゴソと音がする。これがけっこううるさくて気になる。
 それでは困るので、スズメが巣を捨てるの待って、入り込めないようにガムテープで目張りをした。

 スズメには気の毒な気もするが、もっといい優良物件を見つけるものと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?