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小1 憧れの緑のスーパーボール

小学校一年生の頃、アメリカからやってきたスーパーボールが大流行していた。

今のような色とりどりのものではなく、黒板のような濃い緑色でテニスボールぐらいの大きさだった。子供の私にはそのくらいに記憶している。値段は380円だった気がする。1965年の値段だから今なら千円ぐらいか。1個千円のスーパーボールはどう考えても相当高い。

テレビで宣伝していて、とにかくよく弾む、とうたっていた。姉と私は少しずつお小遣いを貯めてそのスーパーボールを買おうと決めた。

数か月後、なんとか貯金が貯まり、二人でバスに乗って小岩駅近くのおもちゃ屋に行った。念願のスーパーボールが目の前に何個もぶら下がっている。手に取るとずっしりとして、思ってたより重たかった。その重たさが金額と重なって、とても高級なものを手に入れた感じがした。

早くそれで遊びたくて大急ぎで家に帰った。

その日は天気もよく、外で遊ぶには最高の日だった。

スーパーボールは足元に落としただけですごい勢いで跳ね返り、頭上高く飛んだ。

「・・・すごい!」
「もっと遠くから投げてみよう」

まずは私のスーパーボールを投げて、道にどのくらい弾むのかを確かめようと姉と道路に出た。車の往来もほとんどない道路が遊び場だった。

私は姉との距離をどんどん広げて20メートルぐらい離れた。

「お姉ちゃん、思いっきり投げて! 」
「わかったー!」

と言って姉は思いっきり力を込めてスーパーボールを投げた。

それは姉と私の中間地点に一度弾み、ものすごい勢いがついて私の頭の上をはるか遠くに飛んで行った。
ビョーンビョーンビョーン・・・ポチャ! 

何度か弾んで、・・・最後に肥溜めの中に落っこちた。

当時は畑の近くには大きな肥溜めがあって、人の糞尿を溜めていた。それを畑の肥やしとして撒いていた。

「えーーー!!」

一度しか投げていないのに・・・肥溜めに落ちるなんて・・・。

落ちたところが落ちたところだけに、もうどうすることもできない。

「私の・・・スーパーボール・・・」

姉は申し訳なさそうにしたが、思い切り投げてと言ったのは私だから仕方がない。

宣伝通り、いやそれ以上にスーパーボールはよく弾んだ。

いつの間にかそのスーパーボールは姿を消し、その代わりにカラフルで大小さまざまなスーパーボールが登場した。でも、存在感と性能は前の物とは比べ物にならなかった。

私のあのスーパーボールは弾みすぎて事故があったのかもしれないが、まさにスーパーボールだった。

これを書いた後、ネットで検索したら写真が見つかった。
耐久性に劣るという理由で販売中止になったそうだ。
スーパーと思っていたが、耐久性には勝てなかったのか。

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