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みんなのいる夢の世界に囚われて

僕はコンピュータと人に夢を植え付ける仕事をしている。
コンピュータ相手だと、それはITエンジニアと呼ばれる仕事だ。
人相手だと、それは作家と呼ばれる仕事だ。

コンピュータは素直で簡単に夢を見始めるので食うに困らない収入になってる。コンピュータは比較的無垢で、ほかの夢の世界を知らないので御しやすい。

いっぽう人はそう簡単に夢を見ない。みんなたくさんの夢の世界の中にいる。まさしく夢中だ。僕の夢がみんなの生活に入り込むことはない。作家として楽しんでもらう機会が得られず少々残念ではあるが、健全なことだ。

なによりも、夢の世界には大きすぎる競合相手がいる。
今回は夢を植え付ける仕事をする僕が、敵情視察しているつもりがその夢の世界に囚われてしまう話だ。犯罪映画ケイパームービーではお決まりの展開だと思う。


僕が住む新浦安。この近所には、ディズニーリゾートがある。

ディズニーリゾートのある舞浜で、毎度毎度たくさんの人たちが降りていく。
楽しげに話している人たちが目指すのは、ディズニーランド、あるいはディズニーシーのはずだ。

ディズニーランドに足を運ぶと、四十周年を迎えようとしているはずにもかかわらず、たくさんの人たちが楽しげに何かを待ち続けている。

パレード。
何かのアトラクション。
あとはレストラン。

この夢の国に辿り着けば、愉快なお祭りの始まりだ。
側からみていると、人は期待されたものが出ることに安心感を得ているようだ。これは事業として、凄まじい成果だ。夢の国というだけある。

僕は、スモークターキーレッグというチキンのホットスナックと、パン・ギャラティック・ピザ・ポートというお店のピザが大好きだ。都合が合えば必ず食べるようにしているほどである。


ディズニーランドから帰宅する。
それでも夢は人を離さないものだ。人は寝ていなくても夢を見れるのだ。

ディズニーリゾートに何度も通うファンの人たちもいて、その人たちはディズニーリゾートの出来事を話し続ける。その話を見聞きすると、夢から覚めて冷静になっていくものである。

ファンの人たちは、僕はこの安心感をなぜ追い求めていたんだろう?
人々がこの夢の世界に何度もたどり着く必要はあったのだろうか?

いろいろ考えるとき、写真を撮っていた人たちから自分を見出す。それで気付いた。
僕はみんなのいる夢の世界の経験を求めていたのだろう。


夢の世界の経験で、少なくともディズニーリゾートで遊んできた人の話を生返事せずに済む。

生返事をせずにじっくり話を聞くなかで、話している相手が面白い話へとどんどん飛び移っていくのが、変化に富んでいて僕は好きだ。夢の世界にいるみたいに支離滅裂で、アトラクションじみている。

みんながいることが大事だ。ひとりじゃつまらない。

みんなスマホを毎日見てるけど、スマホがつながらなくなったときにITエンジニアの僕が四苦八苦しながら念仏を唱え始めたって絶対につまらないはずだ。

僕が早口でぶつぶつ唱える用語はコンピュータという仮想世界のルール、つまり夢の世界の話をしているわけだけど、ディズニーランドのポップコーンやスイーツの話未満の関心度になるのは間違いない。

だから、みんなのいる夢の世界の話でなきゃいけない。


最近になって、みんなのいる夢の世界にちゃんと行こう、と思い立ち、僕は可能な限り話題を何度も聞いた作品に関してはがんばって体験をしようと試みを続けている。

だが、敵情視察しているつもりがその夢の世界に囚われることとなり、一作応募に出してからは執筆の余力が失われ、金をなくし、たまたま寝付けずに久々にnoteを書いているありさまだ。

アイドリッシュ・セブンはがんばってアニメを5,6話までは見た。スマホゲームもダウンロードしてちょっと進めた。トリガーの九条天くんはたぶんヒロアカの世界で無個性でもヒーローになれる。

原神も頑張ってはじめた。初期投入で5万円で素敵ビジュアルによる福利厚生をもたらしてくれるエウルアさんを迎え、サンクコストのせいで自分が原神から逃げられないようにしてみた。気づいたら3ヶ月で累計で11万円溶けていた。休日も夏季休暇も溶けてた。こわい。

アーマードコア6もやりきった。三周した。最後の最後のセリフを自分の手で聞くためにこのゲームをやっていたんだと思えて、とても満足した。だが、みんなを幸せにしたいんだトゥルーエンドルートがみあたらない。全ルート統合した二次創作というコーラルを求めて採掘に向かうことになりそうだ。

キングダムハーツ3も原神のストーリーをほぼやり切ったのとPC版があったのをようやく知ってはじめてみている。だがどうしても前に進まない。たくさんの人が話していないとなかなか進まない、というのは我ながらなかなか無慈悲だ。

スターレイルもはじめた。タダ石で戦闘0カロリー理論(なんなら体力という脂肪も燃やす)の実践者、鏡流という子がやってきた。バチが当たらないようにコンシューマーゲーム1本分の7000円ほど投入して確定ガチャで姫子さんにも合流してもらった。ターン制バトルシステムなのだがほとんど敵のターンがこない。なのにゲームにどこか緊張感がある。なぜ……

みんなのいる夢の世界は、やっぱり面白い。
自分の感じている面白さの理由はもしかしたらただの構造的な繰り返しなのかもしれない。けれどそういったものを楽しむことで得られる新しい会話も多い。

会話の中から、新たな面白さを見つけて開拓することで、僕は人に夢を植え付ける仕事で人の役に立てる日がくるかもしれない。

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