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パリ在住トップフローリストに学ぶ、仕事術と生き方 vol.2


スタイルを持つこと


インタビュー当日、ドキドキしながらzoomで繋いだ画面の向こう、穏やかな声でパリの様子など伝えてくれる由美さんの笑顔に緊張がほぐれていくのを感じます。さあ、せっかくの機会だからいっぱいお話を聞こう!と、まずはデザインについての質問からしてみました。

初夏のコンポジション(アレンジメント)


Bonjourfleurs(以下B) : ディプロマコースで習った3パターンのデザイン(シャンペトルブーケ、ブーケドマリエ、コンポジション)ですが、今までにないデザインで初めて見た時には衝撃を受けました。あのデザインは、やはりトルチュ氏からインスピレーションを得たのでしょうか?

由美さん(以下Y):そうです。でも私がパリに渡った時には、クリスチャンは経営のほうに注力していて、店頭に立って制作することも少なくなってたんですね。だから、正確にはトルチュのスタッフが教えてくれたデザインがもとになっています。でもそれは、クリスチャンのディレクションによるものですから、やはりトルチュで習ったものがベースになっていると言えますね。

B : なるほど。それをもとに、例えば2本ひと組で使う、高低差、透け感といったパリスタイルを作るうえで重要なメソッドを、仕事をこなしながら構築していった?

Y:パリに来て最初に入った花の学校では、クラシカルなデザインを教えていて私が習いたいものでは全くなかったんですね。彼らが店で普段作っているようなブーケを習いたいのに、ヴァンソンも、ブーケなんて何を教えるの?といった感じで。日本人の私の感覚とはずれがありました。私はフランス人と仕事をしてきて彼らの感覚もわかるし、日本人の求めるものもわかる。だからフランス語を翻訳して伝えるだけでなく、普段の仕事からわかるスタイル、どうしてそうなるかという事も説明して日本の方のニーズにこたえる、ということをしていきました。その中で伝え方を工夫して今の形になっていったので、そういった意味では私のデザイン、私のものになっているかなと思う。

ブーケを束ねる準備



B : きちんと言葉で表現できるからですよね。オンラインレッスンでも、画面越しにどうやって伝えるかいろいろ考えてしまいます。


Y :擬態語多いよ!パーンて来て、ポーン!みたいな笑。あとはゼスチャーも使って。でもレッスンに来てくれた方から、この先生は言葉で説明できるのが素晴らしいと思った、という感想も頂きます。日本も含めて30年近く教えている経験もあると思う。

B : 積み重ねですね。

あこがれの店の戸をたたき続け、ついに切望していた学びの場に立った由美さん。それだけでもう満足してしまいそうなのに、そこで学んだことを昇華させアウトプットすることで、自身をさらにアップデートされていったわけです。教えることが得意で好きだから、とさらりとおっしゃっていましたが、なかなかできることではありません!どう伝えるか、どう表現するかを工夫すること。それを考え続けたからこそ、今のデザイン、スタイルが出来上がり、私たちがそれを日本でお伝えしている。由美さんのこれまでの道のりに、背筋が伸びる思いです。

ディプロマレッスン、シャンペトルブーケ


B : インタビュー前に由美さんのブログを最初から見返してみたのですが、始まりは2010年、そのころからすでに3つのデザインは完成されていました。今も基本ラインは変わらず、でも全く古びてなくて斬新だし美しく感じます。美しいと思うものの軸がぶれなくてそれは本当にすごいことだと思います。レッスンを長くやっていると、私なんかはちょっと違うことをやらなきゃとか思ったりしがちなんですが、そういうことはないですか?

Y:基本はこの3デザインですが、常連の方には投げ入れやキューブのリボンワーク、グラフィックブーケなど違う形もお伝えしています。工夫やアップデートは必要ですが、流行りすたりではなく「スタイル」だから古びない。シャネルのようにね。そこまでもっていきたいと思っています。それと毎年の季節が回ってくる喜びとともにやってますから。また芍薬の季節が来たねー!って喜び合うような。毎年新鮮で、飽きないよね。季節を大切に、季節を感じる。そんなエスプリを伝えるのも仕事だと思っています。


ああ、それはよくわかります!花で季節を感じる喜びは、私がパリスタイルで素晴らしいと思うことの一つで、最もお伝えしたいと思っていることです。例えば、早春に咲くすみれを見つけた時のときめき、初夏の瑞々しい葉を透かして光る木漏れ日の美しさ。燃えるような紅葉、立ち枯れた冬の木立の静謐な空気。そういったものをパリスタイルでは花の中に表現していきます。その変わらない美しさを日本でも伝えられたらいいなと思うのです。

まさに秋!のシャンペトルブーケ



いいと思うデザインを突き詰めてスタイルとし、そしてそれを伝えることを仕事にされている由美さん。伝える場はレッスン、ヴィジット、web会報、本の執筆、そしてSNSと多岐にわたります。その中には由美さんが最初に始めたものもあり、由美さんの「仕事を作り出す」チカラに感動すら覚えてしまいます。どうやって思いつき、そして形にしていったのでしょう?仕事を生むという事についても質問してみました!

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