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ソロジャーナル【ひとりきりであるためには】プレイログ

※こちらは めじろ通信社 様作のソロジャーナル【ひとりきりであるためには】の小説風プレイログです


【ひとりきりで】ラスティの部屋【あるためには】


 時計を見ると、午前一時を過ぎていた。台本を読み込むことに夢中になっていて、全然気付かなかった。
 そろそろ寝なくて、明日からの稽古に影響が出てしまう。
 オレは大きく伸びをして、台本をリュックの中にしまい込んだ。
 寝る前に、水でも飲もうかと立ち上がった時、
――ポタッ。
 部屋のどこからか、水の滴る音がした。静まり返ったこの部屋に、その音は大きく響いた。
「なんや……」
 あまりにもはっきり聞こえたので、キッチンか風呂場かで蛇口がきちんとしまっていないのだと思った。
 試しに、一番近いキッチンに様子を見に行く。
 蛇口を確認すると、水漏れ一つしていない。もちろん、使った食器は棚にしまってあるので、そこから滴っているとはとても思えなかった。
上階からの水漏れかとも思ったが、そういうわけでもなさそうだ。
 数時間前に、使ったばかりのキッチン。見慣れたそれに、違和感などあろうはずもない。
 しかし、なんとなく気持ち悪く思えて、オレはもう一度、蛇口をしっかり締めなおした。
 水回りに異常はなさそうなので、今度はベランダから外に出てみることにした。もしかしたら、自分が気付かなかっただけで、雨が降っているのかもしれない。
 むわっとした空気が頬を撫でる。湿気をはらんではいるが、空を見上げても雨雲は微塵も出ていない。それどころか、満天の星空が見えている。とても雨が降っているようには思えない。
 地面も濡れていない。だから雨である可能性はゼロだろう。いや、よく見ると、少しだけ濡れているような、気がする。気のせいかもしれないが、そこだけ他と色が違うので、濡れていると言ってもいいかもしれない。
 試しに触ってみると、指先に湿り気のような感覚はしなかった。
 気のせいか。
「なんやねん」
 ここまで何もないと、かえって不気味に思えてくる。
 部屋に戻るとまた、
 ――ポタッ。
 と水の滴る音が響いた。
 原因もわからぬそれに、鳥肌が立った。
 気持ちわるい。その一言である。
「誰かいんの?」
 いるはずがない。この部屋にはオレだけのはずだ。
 オレは電気を消して、部屋の真ん中で立ち尽くす。暗闇で集中すれば、もしかしたらなにか分かるかもしれない。
 根拠はない。ただ、やってみただけだ。
 息をひそめて、気配を探る。
 オレの心臓の音と、呼吸の音。換気扇、エアコン。ひとつひとつこれはあの音だ、と当てはめていく。
 この狭い部屋で聞こえる音を全て拾っていくと、その最後にまた水音がした。
 今度は耳元で。
 その瞬間、ゾッと鳥肌が立った。肩に水滴が落ちる感覚も。
 慌てて電気をつける。そして、体や床を確認する。
 濡れていない。
 では、先ほどの妙にリアルな音と感触はなんだったのだ。
 オレは首を振り、もう一度、電気を消してベッドの中に逃げ込んだ。
 布団を頭からかぶると、水音はもう聞こえなくなった。
 きっと気のせいだ。だって、この部屋にはオレしかいないのだし、水漏れもしていなかったし、雨だって降っていなかった。
 ただ、ベランダの床がほんの僅かに濡れていたような気がしなくもないが、それも気のせいだ。
 何度も自分に言い聞かせるうちに、オレはいつの間にか眠っていた。
 眠りに落ちる直前、ふと不安が胸に沸いた。
 ――オレは、きちんとカギをかけたか?

~了~

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