昔書いたやつ題名がウケる
— ピアス未満の揺れ 金子由里奈
私はメモ魔だ。どれくらいメモ魔かというと、耳を拡張して、百均で買った単語帳をピアスみたいにぶら下げている。最初はメモしにくかったけど、慣れた。数少ない友人に「メモキチ」というあだ名で呼ばれている。メモキチガイか、きちんとメモさんのどっちかの略だと予想しているが、同義なのであんまり気にしていない。毎日メモピ(メモピアス)をはずして、寝る前にその日のメモを見るのが習慣。一日に100ほどはメモしている。
メモの内容は多分野にわたる。小説や映画の気に入ったセリフ、文章、喫茶店の女子高生の会話や、バイト(キャバクラ)先の客の言葉など。街へ出て、コンクリートに転がる言葉を拾うこともある。
メモピは毎日新品のものに付け替える。鏡でも見ないと、紙を見ながらメモできないので、感覚でページ数を開けてメモを取る。紙が勿体無いと指摘を受けそうだ。しかし、最近は慣れて来て、二ページ間隔でメモを取ることが出来るようになった。重ねてメモしてしまう時も多々あるが、そんなメモは複雑な絵に見えるから好きだ。今回はそんな私のメモを並べていこうと思う。断っておくが、本当にそれだけなのである。人様に見せるように良いメモを選出することもしない。ランダムに紹介する。メモに優劣も比較もないのである。でははじめていく。
メモ
「子供は皮膚が硬い」 トリュフォーの思春期
メモ
「距離」まで歩こう
メモ
ナイーブさを武器にして生きて来たけど、もうやだ。(河内くん)
メモ
点を探す=安定できる場所を探す。生きていく上で自分を危険に晒さない。弱さ、普通の人間
点に活かせない男=常に疑問を投げかける存在
岩=無為
無為を運ぶ
邪魔をする邪念(リボン)
メモ
しおりさん「裸になるなんて絶対に嫌です」
メモ
「恥ずかしさは昨日の雨ほどあるよ」(客)
メモ
存在を揉みたい男性のことを「揉み男」という。揉みたいは性衝動を孕まない。触れたいとも違う。しかし非合法な感情。吸盤のように吸い付きたい感じ(みさちゃん)
メモ
みんな誰かのアイドル(池嵜)
メモ
全てはいつも最善
メモ
瞳が宙にすがりつく表情だった。(松本清張)
メモ
毛穴が甲子園球場(客)
メモ
全てはいつも最善
メモ
昨日あったものが完全に消えたら、昨日だって遠い昔(多和田葉子)
メモ
誰にも見られなくていい、宇宙に映画を打ち上げたい(森田るい)
メモ
立ち飲み屋 サラリーマン 「意識は静岡に置いてきた」
メモ
六畳の部屋なんてタバコ一息ですぐしぼむ
メモ
鴨川は海と一緒じゃん
メモ
初めてできた男の友達
メモ
センチメンタルな健康生活
メモ
一畳の部屋なんて身体がなくても構わない
メモ
キンカン・1600円
メモ
そうらしい・今日からもこれからも、私の中の人は同じらしい・へぇ。
メモ
外に出ないと、メモはあんまり増えない。
メモ
かねこゆうきさんは歩くアロマ(まゆちゃん)
メモ
人殺し以外禁止されていることを全部やりきる(茅くん)
メモ
わたしは切れて光る蜘蛛の糸である(大庭みな子)
メモ
メモが増えるって、何だ?
メモ
「なんで産んだの?」「貴方に会ってみたかったから」(みさちゃんのママ)
メモ
ボタンを三つ開けている客「四つ開けたり、全部開けて裾だけ入れる時もある」
メモ
暴力・ニュアンス 母乳 尿意 暴走族 人参 ぼにちゃん
メモ
ちょっと外に出たら蚊に刺される
メモ
女子高生「『私の孤独は私だけのものだ』ってどう考えても江國香織の言葉じゃなくて私の言葉なんだけど」
メモ
まったくなにも愛さないよりは、他人が醜いと思うかもしれないものを愛する方がいい。イグアナを食べよう。そうすれば、誰にも負けない栄養が得られる(カートヴォネガット)
メモ
図書館で借りた『友情について』に書いてあった落書き「ひとつに溶け合って、スムーズに流れる」
メモ
なか卯の店員「その言葉、あまりにもとろみがなくない?」
メモ
マイクは常にわたしの方を向いている。遠いだけ。
メモ
部屋に半分自分を置いてコンビニに行く
メモ
誤解の中のわたしは可愛くて美しいな
メモ
「納豆と卵を持ち込んで祝福します」(ゆうひ)
キリがないのでこれくらいにしとく。
私は今日も真新しいメモピをつけて生きる。まだ白い単語帳をどんなメモが埋めていくのかがマジで謎で楽しみだ。ちょっと外に出てくる。
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