青春悲劇のシンドロームにブルースは似合わない

現在絶賛公開中「佐々木、イン、マイマイン」

新鋭の若手監督と、俳優が集まり撮られらた作品。映画好きの人々の評判も良く、そういうことであればと見に行った。

見終わってまず思ったのは、映画のオープニング、ラストはいいなと思いました。映像と音楽の合わせ方は、乗せられたし、ラストの飛び方も僕は好きでした。

正直に言えば、その真ん中、ちょっとヒキが弱い、乗せられない、乗せてくれない。カタルシスよりは、リアル、その先のエモーショナル。をやりたいのかなと。

リアルであることの弱さは、観客の個人的な思い出に結びついていかなければ、エンタメになっていかないことだと思う。リアルにやればやるほど、人間を写してたって盛り上がる事なんてそうそうないし、よっぽど魅力的な人間でなければ、知り合いでもない素の表情を見続けられるものではない。と思う。これが芝居であればなおのことである。ただそれについても人の好みがあるので、絶対的なものではないですが。

僕は主人公が悶々とする青春ストーリーがとりわけ苦手でもある。こういったストーリーがエンタメになることはそうはないと思う。あとは共感できるか。僕はそういうキャラクターについて、理解はできるが共感はできない。これは最悪だと思う。理解ができる分、展開を予想しやすくなってしまうし、そうすると途端に見ていることが辛くなっていく。

青春ストーリーにホラーなり、サスペンスなり、ジャンルがくっついてくればこれはエンタメにもなり得るだろうが、これだけだと、やっぱり食えないんだよなあ。

役者の演技について、僕は役者ではないので、ただただ好みの話であるのだが、この映画に出ている役者の方みなさん、とても誠実に見えました。ただ器用ではないのかなと。せめて脇にでも器用なベテランを配することができれば。ということでいうと佐々木の父親役の鈴木卓爾さんは適切だったと思う。もう少し、例えば現代パートにも誰かベテランを、あわよくば過去パートにももう少し頻出するキャストでベテランがいれば、4人組の中に1人でもより器用な役者がいれば、もっと印象的なシーンを作ることができたかもしれない。と思ったりして。でもそれはどこまでも結果論に過ぎないか。

冒頭で書いた通り、この映画の監督の演出は、音楽と絡んだ時、演出が強く見える時に非常にうまく発揮されているように思う。調べて見るとMVなども撮られているようで、それはまさにぴったりなんだと思う。そういうことで言えば、この監督が撮った音楽にまつわる映画なんてのも見てみたい。

でも、作中でブルースっぽい音楽が使われている。雰囲気としては合っていると言えなくもないのだが、でもブルースって辛さを引きずりながらも、前向きなもののような気がして、青春を引きづって悶々としてる主人公のお話にはちょっと合わない気がした。とは言え音楽に特に詳しい人間が言うのもどうかと思うが。

なんだかんだ書いてきたきたが、今日本映画好きな人ってきっとこんな感じの作品が好きな人が多いと思うし、実写日本映画の未来はこの方向性にあると最近はよく思う。それはそれで、現状ではきっとベターなんだと思う。

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