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最新科学における分かり易いけど問題のある解説

①ヒッグス場が素粒子に質量を与る
②ブラックホールは蒸発する
これら自体は嘘ではありません。問題はどうしてそうなるのかという説明が難しいので易しく説明して嘘が入るのです。私も完全に理解しているわけではありません。理解してないものが専門家の解説を嘘つき呼ばわりするのはおかしいですね。はい、すみません。

ところで、二つともニュースにも取り上げられ一般の関心も高い物理現象です。関心の高い理由は、

①は2013年にスイスのCERN研究所でヒッグス粒子の発見が発表され、同年に提唱者のヒッグス博士はノーベル賞受賞を受賞しました。ヒッグス粒子が素粒子が質量を与えているということが一般紙にも取り上げられ、「私の体重はヒッグスのせいか!」と言ったジョークも耳にしました。

②は車椅子の天才物理学者ホーキング博士が最初に提唱した理論で、光さえも出ることができないと言われていたブラックホールがエネルギーを放出していずれは消えてしまうというものです。ホーキング博士の突然の死が世界に伝えられたのは一昨年でした。またブラックホールの撮影成功は昨年。ブラックホール合体による重力波の検出成功とそれに対するノーベル賞受賞もニュースになりました。

ところで、ヒッグス粒子の発見は3月14日、ホーキング博士の死去も3月14日、アインシュタインの誕生日も3月14日、また3月14日はπの日で数学の日(日本)ですね。

閑話休題、このように非専門家にも関心の高い科学テーマですから、なるべくわかり易く解説することが必要になってきます。専門の科学者も場の量子論から説明するわけにはいきませんからイメージしやすい例え話のようなものを持ってきてしまうことになります。科学雑誌、科学愛好家向け教養新書、一般向け科学書、WEB解説等々。これらを通じて何故か同じような解説が出回っています。それは、

①ヒッグス粒子が存在すると、ヒッグス粒子が素粒子が動くの邪魔して動きにくくする。重いものほど動きにくいので、素粒子は質量を与えられたことになる。

②ブラックホールの事象の地平において生成した粒子反粒子対の一方が地平の内部に落ち込む。落ち込んだ粒子は負のエネルギーを持つためブラックホールのエネルギーを減少させる。この過程によりブラックホールのエネルギーは減少を続け、ついには消滅してしまう。

②の方は専門用語が多くこれでも難しい解説ですが、これらの解説は間違いなのです。じゃあ本当はどうなの? 申し訳ないが私にもよく分からない。場の量子論は勉強中なので、と逃げたいところですがここまで書いてそれはないだろとの声が聞こえてきそうなので頑張って書いてみます。(あくまでこれも素人解説なのでと逃げておく)

①ヒッグス場が素粒子に質量を与える
まず、ヒッグス粒子はヒッグス場の励起状態です。場?励起状態? 無視。。。 ヒッグス場は他の素粒子の場と相互作用します。宇宙が誕生した初期の高温状態ではヒッグス場はゼロのところでポテンシャルが最低値で、ゼロから離れるとポテンシャルが増加する自由振動のような場でしたが、宇宙が冷えてくるとゼロでない場にポテンシャルの最低値を持つ状態になります。対称性の自発的破れと言います。水が凍って氷になり対称性が変わるようなものです(やはり例え話になってしまう)。

ヒッグス機構

電子の場合、電子はもともと質量を持っていませんでした。電子というのは電子の場が励起された状態です。ヒッグス場は電子の動きを邪魔しませんが、電子場が励起され電子が生成するときのエネルギーには関係します。宇宙が高温でヒッグス場ゼロが真空状態の時には電子の励起に与えるヒッグス場の影響はゼロなので電子の質量はゼロです。しかし宇宙が冷えてヒッグス 場がゼロ以外の値に真空状態を持つようになると、その分だけヒッグス場は電子場が励起して電子が生成する時にエネルギーの足かせを嵌めます。生成した電子はその分余計なエネルギーを持つことになります。これが電子の静止質量(つまり動かなくても持っているエネルギー)です。ヒッグス場は電子の動きには全く影響を与えません。ヒッグス粒子は電子に力を与えません。ヒッグス粒子が電子の動きを邪魔するというのは間違いなのです。

②ブラックホールは蒸発する
まず間違った解説をもっと詳しく書くと、
真空は何も無いところではなく、仮想的に粒子・反粒子対が生成する。反粒子とは粒子と電荷が反対で質量などが同じ素粒子のこと。電子に対する陽電子が相当します(反粒子の存在は正しいです)。トータルの電荷量や運動量はゼロなのでそれらの保存則は破らないが、どちらもエネルギーは正なので、エネルギーの保存則を破ることになる。量子力学の時間とエネルギーの不確定性関係により、仮想粒子対は破ったエネルギー量の逆数に比例する時間で消滅する。
ところがブラックホールの事象の地平で仮想粒子対が生成した場合、粒子の静止エネルギーに重力ポテンシャルが加味され、事象の地平の内側に入った粒子はトータル負のエネルギーを持つ。一方事象の地平の外側の粒子は正のエネルギーを持つ。2つの粒子のエネルギー和はゼロとなるのでエネルギー保存則を破ることはなく、仮想粒子対は実粒子対となり、負のエネルギーを持った粒子はブラックホールの中心へと落ちいていきブラックホールのエネルギーつまり質量を減少させる。
嘘に嘘を重ねてしまったという感じですね。
まず、仮想粒子対の生成がエネルギー保存則を破るというのが嘘です。
実は仮想粒子対、仮想粒子等は理論を近似的に扱うために全ハミルトニアンを自由ハミルトニアンと相互作用ハミルトニアンに分けて摂動論的に扱ったために出てきた計算上のものでしか無いのです。ハミルトニアン? 摂動論? 無視。。従って全ハミルトニアンで見ればエネルギー保存則を破っていないし、繰り返しますが、仮想粒子対はあくまで計算のための仮想でしか無いのです。仮想の粒子がブラックホールのエネルギーを下げることはできないのです。
ではブラックホールは蒸発しないのか? いいえ蒸発することは正しいと考えられています。

ホーキング 放射

では何故蒸発するのか。
ブラックホールの極端に歪んだ時空における場の量子論を考えなければなりません。まずは特殊相対性理論における加速度運動している観測者を考えます。慣性運動している観測者同士はローレンツ変換で座標変換できますから互いの真空状態に違いはありません。しかし加速度運動している観測者の真空とは互いに変換できないため、慣性運動している観測者とは異なる真空基底状態を持つとする事ができます。つまり加速度運動している観測者は慣性運動している観測者が観測しない黒体輻射を観測すると仮定する事ができます。これをウンルー効果と言います。加速度運動してる観測者が静止しているように座標変換した座標系(リンドラー座標系)を用いるとそこに事象の地平のようなものが現れます。ブラックホールにおける事象の地平も同様に考える事ができブラックホールは温度を持つと考えられます。従って黒体輻射によりエネルギーを失う。しかも放出するのは殆どが光子でです。また放出する領域も事象の地平を囲む広大な領域からです。これがホーキング 放射なのです。
うーん。難しいですね。
難しい内容を正確にしかもわかりやすく書くいうのは如何に困難な事であるのかわかりました。もっと勉強すればわかりやく解説する事が可能になるのでしょうか。とりあえず、まずは勉強ですね。


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