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砂糖のタルトの砂糖って?

昨年から学んでいる講座で
北フランス(Nord・Pas de Calais地方)のお菓子、
Tarte au sucre(タルト・オ・シュクル)を作りました。
訳して「砂糖のタルト」

名前通りにブリオッシュの生地に
お砂糖ベースのガルニチュールを乗せて焼き上げる素朴でなじみ深い地方菓子です。

昨日の講座ではそのお砂糖は何を使うか…という話題に。
私としては一も二もなくヴェルジョワーズという甜菜糖を使うのだという認識でした。
なぜなら、
ヴェルジョワーズはこの地方の特産だから。
これを使わずして地方菓子と呼べようか…くらいな勢いで信じ込んでいました。

講座の先生のお話でも「基本はヴェルジョワーズのはず…」とのことでしたが、
名だたるフランスのレシピにはカソナードと呼ばれるサトウキビ由来のお砂糖を使うものが多く、そこがしっくり来ないのだとも…

こうなったら調べるしかない!と
帰宅後に手元の関連資料を数冊開いてみました。
レシピ的にはどれもやはりヴェルジョワーズ使用。
丸く伸ばしたブリオッシュに指でいくつか窪みを作り、
そこにヴェルジョワーズやちぎったバターをのせて焼き上げるのが基本でした。

ところが、フランスの食目録
『L'inventaire du patrimoine culinaire de la France』の
Nord Pas-de-Calais版に面白い記述を発見したのです。
私の解釈も交えざっくりまとめるとこんな感じです。
↓↓↓
砂糖のタルトはフランス革命以前からこの地方のお菓子として知られていた。その当時はダンケルク(この地方の港町)に当時のフランス植民地から粗糖(サトウキビ由来の砂糖のベース)が運ばれており、
このエリアには12ほど製糖所があったのでカソナードが出回っていた。
(だから当初のタルトはカソナード使用だったのでは…???)
革命を経てナポレオンの時代となった時、
大陸封鎖令が敷かれたため
粗糖も入ってこなくなり、
政策として砂糖の原料となる
甜菜の栽培が盛んになり
ヴェルジョワーズがこの地域の特産品となったので、砂糖のタルトにヴェルジョワーズを使うようになった。
19世紀初頭からヴェルジョワーズ版砂糖のタルトがスペシャリテとなった…と記されており、大陸封鎖令の時期とも合致するので納得できます。

これらの事から
砂糖のタルトはカソナード版の方が歴史的に古く、
北フランスのテロワールを表現するお菓子としてはヴェルジョワーズ版の方がより個性を発揮している…と
考察してみました。

さらにカソナードについて調べてみると
ウィキペディアでは「北フランスやベルギーではカソナードはヴェルジョワーズのことを指す」とあるのです!
ですからこの地方のレシピに「カソナード使用」と記されていても、
それが甜菜由来のヴェルジョワーズであることも十分に考えられるのです。

なんともややこしい…

総合して考えると
どちらの砂糖を使うのも正しいと言えますね。

ところでヴェルジョワーズってどんなお砂糖かご存じですか?

日本で手に入れやすのはいこのタイプ。
こんなお砂糖です。

袋にBruneと記載があり、こちらは精製度が低い茶色のタイプ。
もうひとつBlonde(ブロンド)という白っぽいものもありますが
日本ではあまり見かけませんね。

今度北フランスに行ったら
お砂糖のタルトのスタイル、現地のカソナードの原材料、
ブロンドカラーのカソナードなどをチェックしてこようと思います。


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