草介は病院の待ち時間が好き

 病院の待ち時間が好きだ。

 小さい頃から、アレルギー性鼻炎、2度の骨折、水いぼ、ちょっとした風邪や年1で必ずかかるインフルエンザ、というような小さな病気にしょっちゅうかかり、事あるごとにありとあらゆるお医者さんに診てもらってきた。累計したらとんでもない額の医療費がかかっているだろう、が、ぼくの地元の自治体では18歳まで無償だった。我が地元自治体の納税者のみなさま、大変お世話になりました。

 そこでどうしても発生してしまうのが、待合室での待ち時間。長いときには2時間なんてことも。けれどもぼくはそんなに苦痛にしていない。大抵読書を楽しんでいる。待合室のふかふかしたイスでの読書はとても快適。つい最近も、耳鼻科で副鼻腔炎の治療を待つ間、麦本三歩の好きなもの第二集を読んだ。

 ぼくは読書が好きだけれど、とってもだらけた性格で、よっぽど気に入った小説でなければ、家で読めない。だから電車の中や病院の待合室といった人目があるような環境の方が読書が捗るのである。周りにカッコつけたいのだろうか、めちゃめちゃ本が進む。最近は大学の図書館に自分の本を持参して読んでいる。冷静に考えると変なやつだ。まあそうでもしないと本が読めないので、どうか許してやってほしい。

 というように外で本を読むことが多いのだが、特別な環境で読んだ本はとても記憶に残る。これを教えてもらったのは高校の修学旅行のとき。当時読書クラブに入っていたのだが、そのクラブの指令として、修学旅行に本を持って行き、1ページでもいいから読め、というものが出された。旅行先での貴重な時間を家でも読める本に費やすのは大変もったいない行為のように思えたけれど、いざ読んでみると、日常生活で読むより少し面白く感じた。旅行の高揚感のおかげで本の内容が強く脳に刻印された。旅行の思い出をより味わい深いものにした。

 本に限らず、特別な環境で作品を鑑賞すると強く記憶に残る。たとえば、散歩しながらのラジオ。今でも家の近くの田んぼの畦道を歩けば#佐久間宣行ANN0で、佐久間さんが、ゴッドタンのマジ歌選手権で後藤さんのダサカッコよさについて語る音声が耳元に流れてくるし、電車で30分ほどの街にある川沿いの公園を歩けば独立宣言をする勇ましい佐久間さんの声が蘇ってくる。

 そんなふうに、特別な空間を分かち合うことで、その作品に対して自分だけの思いが生まれる。愛が深まる。きっと感情が飛躍してしまって、作品自体の内容を勝手に解釈してしまうだろうけど、それでいいと思う。楽しみ方は人それぞれなのだから。

 なかにはぼくと違って病院の待ち時間が苦手な人がいるだろう。単純に待つのが苦手な人。単純に病院が苦手な人。子どものはしゃぎ声が鬱陶しい人。混雑した空間が苦手な人。体調が悪くてそれどころじゃない人。いろんな人がいると思う。そのいやな空間でさえも、少しの工夫をすることで、きっとより魅力的な空間になると思う。少しの味付けをするだけで、全く違う味になると思う。人生を少しでも彩るために、より楽しくなるようにはどうしたらいいか考えることにしませんか。安心してください。楽しみ方は人それぞれです。

 これは自分に言っています。気分を害された方、申し訳ないです。少しでも共感してくださった方がいれば、これからの投稿を読んでください。できるだけ楽しみます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?