2023/2/13 気になるニュース④ Microsoft 対 Google
★ AIChatの「ChatGPT」報道が過熱するなか、巨大テック企業に大きな発表がありました。
Microsoftは「新しいBing」、Googleは「BARD」なるものを発表。簡単にまとめてみようと思います。
① Microsoft「新しいBing」
1.公式発表 2/7
★ 「新しいBing」 は、ChatGPT よりも強力で、検索専用にカスタマイズされた新しい次世代 OpenAI 大規模言語モデルで稼働しているとの事です。
2.限定プレビュー開始 2/7
★ 新しい Bingの限定プレビューが提供されました。期待していた試用はまだ出来ません。順番待ちリストに参加して、承認メールが来たら使えるようです。数週間程かかる予定との発表です。
3.OpenAIに100億ドルの追加投資 1/10
★ 先月に遡りますが、OpenAIに100億ドル(約1.3兆円)の巨額投資の発表がありました。2019年に10億ドルの出資の10倍で、マイクロソフト社創業以来の最大の出資金額との事です。
100億ドルの追加投資により、OpenAI発行株の49%をマイクロソフトが占める事となり、ほぼ子会社、技術独占となりました。
4.OfficeやAzureにもAIを統合
★ 「Officeソフト」と「ChatGPT」が連結出来たら、文章の作成の手助け、難しい数式、VBAコード等が操作段階で解決し、生産性が格段に向上する事は間違いないでしょう。
また、マイクロソフトには「Azure」と呼ばれるクラウドサービスがあり、既に2021年にはAzure OpenAIサービスをリリースしております。
更なるAI性能向上となれば、検索エンジン対決だけでなく、Amazonの最大収益コンテンツ「AWS」とのクラウドサービス対決となりそうです。
5.決算と株価
★ 1/24 マイクロソフト<MSFT>は2Qの決算を発表
2Q決算は 増収減益
売上高 2%増収(530億ドル)
純利益 -12.5%減益(164億ドル)
EPS -0.28ドル(2.2ドル)
★ 昨年からのパソコン市場鈍化の波や、「Azure」の成長鈍化もあり、主要3項目のいずれもコンセンサスを下回りましたが、1/10、OpenAIへの追加出資、2/7、新しいBing発表と良いニュースの影響もあったのか、株価は75日と200日平均移動線を超え、新しいBingに対する市場参加者の期待が伺えます。
※ EPS「Earnings Per Share」の略で、1株当たり純利益
EPSからわかることは、企業の稼ぐ力「収益力」と「成長性」の2つです。
② Google「Bard」
1.Bard の紹介
★ 2/7、ChatGPTに対抗する為にAI搭載のチャットボット「Bard」を限定試験者向けに公開すると発表。読み方は「バード?、バルド?」
数週間のうちに一般ユーザーにもサービスを用意するとの事です。
下記はスンダー ・ピチャイCEOの公式ブログでの文面の抜粋です。
2.検索エンジンのシェアと使い方
★ Googleが検索エンジン世界使用シェア最大の約80%を誇っており、対するBingは約9%。
通常ネットでの検索は、質問内容のワードに対して「アクセスの多いページ」が検索上位になり、表示された結果から数ページを自分で内容を目で通し、それを自分で吟味しなければなりません。わからない事を一から調べ、ある程度理解をするには、それなりに時間が掛かります。
しかし、AIChatとなれば、質問に対し既に学習をしているAIが質問に対して文章で答え、補足として参照ページの候補が添えられる方式になり、大幅な時間短縮になり、人々の生活に大きな影響があるでしょう。
実際、ChatGPTは学生の論文などで使用され、精度が高すぎ、米国や西欧では教育現場にChatGPT使用の規制をかける程の旋風が起こっているとの事。また、ChatGPTにさまざまな高難易度な資格試験を受けさせたところ、次々と難問に回答したとの結果も聞いております。
下記リンクの「ChatGPT研究所さん」のnoteページに詳しく書かれておりますので、ぜひご覧ください。
3.Code Redの発動
★ ChatGPTの驚くべき能力を目の当たりにしたGoogleは、創業以来(本当かな?)初の「Code Red」(非常事態)を発令しました。
本来、GoogleのほうがAIに関しては先生であり、AIはGoogleの事業にとっての最高重要技術であります。ChatGPTはさらに進化する事は疑いようがない事はGoogleが一番わかっている事でしょう。
マイクロソフトとOpenAIとの連合軍は、検索シェアが劇的に変わりうる危険な存在になりました。
広告収入がメインであるGoogleにとっては、ググってもらえないと、広告主に対してのデータ提供の精度が落ち、広告収入の減少につながります。現在無料で公開試用されているChatGPTはアクティブユーザーで1億人と言われ、そして、日々1億人からデータ回収と学習を続けております。日々のランニングコストは数千万と言われていますが、マイクロソフトの追加出資と今後のバックアップで問題は解決している事でしょう。
Googleはそれを指を咥えて待っている事は出来るわけもなく、連合軍に対抗する為、熟成不足の仕上がっていないと思われる「Bard」を限定ユーザー公開する状況に追い込まれました。
4.決算と株価
★ 2/2 アルファベット クラスC<GOOG>は4Qと本決算を発表
4Qの業績は増収減益
売上高 1%増収(760億ドル)
純利益 -34.0%減益(136億ドル)
EPS -0.48ドル(1.05ドル)
通期業績は増収減益
売上高 9.8%増収(2828億ドル)
純利益 -21.1%減益(600億ドル)
EPS -1.05ドル(4.56ドル)
★ 広告収入の悪化、特にYoutubeでの広告収入の頭打ち、伸び悩みの影響を受けています。動画配信プラットフォーム競争の激化が大きな原因と言われています。第四四半期では、純利益が前年比34%減(約64億ドル減)と大幅減。
★ 年明けの米国インフレ鈍化ムードによる株価上昇トレンド(NASDAQは1月、10%近く上昇)で200日平均移動線を超える展開でしたが、2/7の「Bard発表プレゼン」で準備不足が露呈し、株主に不安を与える結果となり、株価は2/10、95ドルまで下落。非常事態が緊急事態に。
③ まとめ
● Googleの独占的かつ利権化した広告事業に対し、Microsoft帝国が待ったをかける事となりそうだ。
● 「Bard」の出来如何によっては、Googleの収益悪化により、既存の無料コンテンツが有料になる事もありえるのでは?
● WordやExcel、PowerPointとChatGPTの連携は若年ユーザーに魅力的なコラボとなり、Office365、Microsoftの成長要因となりうる。
● この先数年、ハイテク企業の成長は鈍化するのが市場予想でしたが、MicrosoftとGoogle対決により、関連各社とも切り札の出し惜しみが無くなり、局所的には盛り上がるかも知れません。
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