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新たな手に持つ

運動をする事が小さな頃から嫌いだった。
時間割の【体育】という科目の文字を見る度に憂鬱な気持ちになるのは高校まで続いた。理由は人格の外殻である肉体のせい。

人生の半分以上を肥満で過ごしてきた自分は、自身の体型に強いコンプレックスを持っている。大学卒業時には100㎏まで増えたそれは、今思い出してもおぞましい物だと思う。と言いつつその頃の写真を1枚だけiphoneに保存してある。おかげさまで健康な肉体の今と見比べて【ここまで頑張れたのだからこれからも】自分を鼓舞する為に使ったり、初対面の人との話のネタなどにしている。ネガティブをポジティブに反転させる事はとても難しいけれど、対立する2つの点を持つ事が自分は変われたという自信にもなる。今ではコンプレックスと自尊心が上手く共存していると思う。

話が脱線してしまったけれど要は【昔から体が大きかった】という事で、その影響で昨今はコンパクトでスリムな物の好むようになった。例えば、傘は折り畳み傘。リュックよりも肩掛け鞄、鞄よりも巾着。500mlのペットボトルよりも300mlのペットボトル。20本入りの煙草よりも14本入りの煙草etc…
大きいのは自分の体だけで十分。所持する物や動作は極力小さく無駄の無い方が良い。という長年の自堕落が体型の変化と少しの合理性と共に生活へ顕現してしまった。

それはカメラにも影響を与えた。写真を撮り始めて四年目へ突入しフルサイズ機の取り回しにも慣れたこの頃だが、撮りたい物と対峙するには大きすぎる。と物質的な隔てとなっていた。写真は撮れればどんな機材でも良い。とあまりガジェットにこだわりを持たない自分が、今回の問題を解消するにあたって検討したメーカーは2つ。1つは数年前に一時期所有したけれどファインダーに馴染めず手放した。となれば残るは1つ。自分がこれを所持する事は無いだろうと考えていたけれど、気づけば手に入れていた。

軽い。小さい。持ちやすい。
選んだ理由は単純にこれだけ。
他は何も望んでいなかった。けれど、【撮る事が楽しい】と感じた。これには驚いた。ガジェットに興味のない自分が、道具を使う喜びや楽しさを感じていた。きっとこれも'反転'なのだろう。

繰り返し繰り返し使い続けていく事で巡り回っていく。一巡してまた一巡。時には同じ場所をなぞるだけでは無く、質量770gを持ちながら、大きくスウィングバイがしたい。

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