ロボットアームの指先「エンドエフェクタ」

製造業や物流業をはじめ、研究分野や医療分野など、さまざまなシーンでロボットアームは活躍しています。ロボットアームの指先として、実際にワークに触れる部分がロボットハンド(エンドエフェクタ)です。


人の手は、指先でものを掴んだり、道具を持って作業をしたりといった細かい作業を行えます。ロボットにおいて、人の指先に当たるのがロボットハンドです。ものを掴んだり吸着したり、ネジを回したりと、ロボットアームの先端に取り付けてワークに影響を与える部分なので、「エンドエフェクタ」と呼ばれます。


ものを掴む用途のロボットハンドは、人の手の感覚に備わっている「適度な力加減で柔らかいものを掴む」動作が難しいとされていました。しかし、近年は、触った感覚を電気信号に変換する触覚センサーが搭載されたロボットハンドも登場しています。 野菜や果物など、個々で柔らかさの異なるものも掴めるようになり、従来と比べ人の指先に近い繊細な作業も可能です。エンドエフェクタはグリッパーとも呼ばれ、人体の手のような役割を担っています。
 


ロボットハンドにはいくつか種類がありますが、それぞれどのような作業を行えるのでしょうか。
挟んで持つタイプのロボットハンドは、把持ハンドといいます。
指の数はさまざまで、2本であったり、多いときは4本以上あったりします。関節部に設置されたモーターなどが、ロボットハンドの指を動かします。また、関節部に6軸力覚センサーなどを設置し指先の摩擦力や圧力を推定します。これによって把持力の制御を行っています。
把持ハンドは、対象物をつかんで同じ動作を繰り返す場合に向いているので、大ロットの生産工程でよく使われています。
 
吸引タイプのロボットハンドは、空気を吸い込んで対象を吸着して持ち上げることができます。真空吸着ともいい、真空状態を作り出すことで吸着する仕組みです。
吸引タイプのロボットハンドは、空気で吸い込むので機構が単純です。大きな鋼板などであっても吸着できれば運ぶことができます。また、対象物とロボットハンドが擦れることがないため、傷がつきにくいです。
一方で、対象物に水や油が付着していると吸着しきれずに落としてしまう場合があります。また、対象物に凹凸や穴があると空気が抜けてしまい吸着できません。
 
マグネットグリッパーという、磁力で引き付けるロボットハンドもあります。
磁石は電磁石を使っており、流す電流のONとOFFを切り替えて持ち上げと離す動作を制御しています。
マグネットグリッパーは、機構が単純で設計しやすく、真空吸着できないような穴や、凹凸がある形状も持ち上げられます。
 
クーロン力で持ち上げるロボットハンドは、電極に電圧をかけて対象物との間に電位差を作って引き付けます。
プラスチックフィルムや通気性のある繊維などを吸着する場合に適しています。また、真空環境であってもクーロン力は発生するので、半導体の製造工程で基板を搬送する場合によく使われます。
 
ロボットハンドにはさまざまな種類があります。
作業に適したものを選定すれば、人の数倍の効率で作業を行うだけでなく、人体に影響のある作業をこなすことも可能です。
また、ロボット導入時に気になるのがプログラミングや設定作業などにかかる手間ですが、協働ロボットによっては、ハンドメーカーのソフトをダウンロードして簡単に設定できる場合もあります。
手間をかけずに導入できる点も、ロボットハンド選定時の基準になるはずです。 ハンドごとの特徴を理解し、用途に適したロボットハンドを選定することが容易になりました。

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