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テュルク諸語一番の変わり者!チュヴァシ語ってどんな言葉?

Ырӑ кун пултӑр! ウィロ・グン・プルドル(チュヴァシ語で「こんにちは」)

チュヴァシ語も研究するタタール語講師の boltwatts です。前回は、私の人生を狂わせた(?)タタール語がどんな言語であるかについて簡単に解説しました。

今回は、私が研究するもう一つ言語、タタール語のお隣さんであるチュヴァシ語について、簡単にご紹介しようと思います。「詳しく知りたい!」という方は、言語学大辞典や共著『チュヴァシュの言語と文化1』をぜひご覧ください(東京外大の図書館などにあります)。

テュルク友の会のアカウントでは、私が現地を旅行した際に見たチュヴァシ語について記事を書いています(言語の紹介を先にしたほうが良かったですね)。ぜひ、そちらもあわせてご覧ください。

前置きが長くなりました。そろそろ本題に入ろうと思います。

チュヴァシ語の系統・使用地域・話者

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チュヴァシ共和国の観光名所マリア像

チュヴァシ語は、トルコ語や前回ご紹介したタタール語と同じく、テュルク諸語の一つです。なので、トルコ語やタタール語とは親戚関係にあるのですが、(血縁的には)最も遠い親戚といえます。というのも、なんとテュルク諸語はまず、「チュヴァシ語」と「それ以外ぜんぶ」の2つに分類されるんですね。つまりチュヴァシ語は、テュルク諸語の中で最も変わった言語なんです。なので、他のテュルク諸語を知っている人が初めてチュヴァシ語を聞いたり、チュヴァシ語の文章を見たりしても、意味はほとんど分からないでしょう。

チュヴァシ語が他のテュルク諸語に比べてどこがどれくらい変わっているのかについては、別の記事でとりあげようと思います。ここでは、私が SNS で見たときに、「これは他のテュルク諸語の知識では全く分からないだろうな」と思った例を挙げておきます。

Шӑнчӑклӑскерсемех-ши?(ションジョクロスケルゼメヒシ)

この文の意味が(ニュアンスを含めて)分かれば、あなたは間違いなくチュヴァシ語ガチ勢です。

話されている地域(濃い灰色)は、タタール語(ピンク)のお隣です。よく見ると、ピンクと濃い灰色が入り混じっているところもありますね。タタール語にとってチュヴァシ語は、「かなり前から隣にいるが、血縁的には最も遠い親戚」といった感じでしょうか。

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チュヴァシ人が多く住む濃い灰色のところには、チュヴァシ共和国があります。タタール人が多く住むピンク色のところにはタタールスタン共和国があり、これらは隣同士です。

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タタール人を含め、トルコや中央アジアに住むテュルク系民族の多くがイスラム教徒であるのに対し、チュヴァシ人の多くはキリスト教徒です。話者人口はおよそ100万人で、タタール語よりもかなり少ないですが、ロシアの少数言語の中では多い方です。タタール人よりもロシア化が進んでいて、話者数は年々減少しています。

チュヴァシ語の文字・発音・文法

チュヴァシ語は、ロシア語とおなじキリル文字で書かれますが、ロシア語にはない4つの文字 ӑ, ӗ, ҫ, ӳ があります。

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Чӑваш наци музейӗ(チョヴァシュ・ナツィ・ムゼイェ)
「チュヴァシ国立博物館」

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Кайиччен ҫутта сӳнтер.(カイッチェン・シュッタ・スュンデル)
「行く前に明かりを消せ」

上の写真には ӑ, ӗ が、下の写真には ҫ, ӳ がありますね。 ӑ, ӗ, ӳ は母音、ҫ は子音を表わす文字です。母音はこの3つを含めて全部で8つあります。子音は14個と少なめです。チュヴァシ語の文字や発音がどんな感じかは、以下の動画を見るとなんとなくお分かりいただけるかと思います。

文法は、ほかのテュルク諸語とおなじく日本語に似ています。例えば、単語の後ろには接尾辞が付きますし、語順は主語・目的語・動詞の順番になっています。

Эпӗ сана юрат-ат-ӑп.(エーベ・サナ・ユラダードップ)
私は 君を 愛する-(現在)-(1単)
「私は君を愛している」

チュヴァシ語は、ロシア語やタタール語など、周りの言語の影響を強く受けています。特にもう一つのお隣さん、ウラル系の言語であるマリ語とは、長い間お互いに影響を与え合ってきた結果、似ているところがたくさんあります(血は繋がっていないが、小さいころから一緒にいる幼馴染みたいな感じでしょうか)。例えば、チュヴァシ語で「ことば」を意味する単語は сӑмах(ソマッフ)で、これはトルコ語の söz(ソェズ)やタタール語の сүз (スュズ)など他のテュルク諸語とは似ていませんが、マリ語の шомак(ショマック)とは似ています。

チュヴァシ語を学ぶには(2023年2月22日更新)

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チュヴァシ共和国の観光名所チェボクサル湾の風景

この記事を読んで、「チュヴァシ語を学んでみたくなった」という方が少しでもいらっしゃれば嬉しいです。東京外大のオープンアカデミーでチュヴァシ語の講座が用意されています。現在、「チュヴァシ語初級I」が受講生募集中です。

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ぜひチュヴァシ語を学んで、日本ではほとんど知られていないチュヴァシの世界をのぞいてみましょう!

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!自己紹介と言語の紹介が終わったので、次回からは旅の思い出を振り返ったり、現地のニュースについての感想を書いたりしてみようと思います。

Тепре тӗл пуличчен!
(テプレ・テル・プリッチェン)
「ではまた!」


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