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携帯をスられて”緑のブツ”を手に入れた話 #19歳僕のギリシャ2ヶ月放浪記6

やっぱり楽しすぎる時間の後には何か起こる

ロマ人親子が去った後も隣に座っていたギリシャ人女性(シドレア)に加え、暇そうにしていた店員達とも楽しく話していた。会話が一段落つき、時間を確認するため携帯を触ろうとしたら、机に置いていた携帯がない。机周りを何度も確認したがない。慌てた僕の様子を見て、シドレアが「どうしたの?」と話しかけてきた。「机の上に置いてあった携帯がない」と返答すると、店にいた全員が総出で探してくれた。だが携帯はない。ふとロマ人親子が店に入ってきた時の事を思い出した。あの時僕はポテトを掴んだ母に集中していたが、傍にいた娘2人は何をしていたんだろうと考えた。その瞬間に全てを悟った。僕が母に「何をしているんだ」と言っている横で、娘たちが机の上にあった携帯を盗んだんだ。全身から血の気が引いた。当時パソコンを持っていなかったため、今後の宿泊先や航空券などの情報は全て携帯に入っていた。その事が頭によぎった瞬間、僕は店にいた全員に「彼女らを探してくる」と言い捨て、急いで外に出た。

今考えれば当たり前なのだが、彼女らを見つける事なんてできない。もうすでにあの事件から10分以上経過している。そんなことも考えれなかった僕は、とりあえず走り続けた。途中で黒人男性10人グループの輪に間違えって入ってしまって何か言われたり、車に轢かれそうになったが走り続けた。だがやはり見つからない。20分程走り続けた後、もう彼女たちを見つけることができないと諦めた。すると背負っていたバッグを店に置いてきてしまったことに気付いた。店に急いで戻った。幸いにも店の人たちは優しく、バッグは外に出た時の形で置いてあった。

奇跡の公衆電話

店にいた全員がとりあえず警察に電話しようと言ってきた。ただその前に携帯の通信をストップしなくては、悪用された際に高額になると思い、「まずは日本にいる親に電話したい」と僕は言った。するとシドレアが外にある公衆電話から電話しようと言ってきた。内心「いや公衆電話から国際電話出来るわけないやろ、こんな時に冗談やめてくれ」と思っていた。しかし、彼女は本気の眼差しで何度も「公衆電話に行こう」と誘ってくる。しまいには私の携帯を貸してあげると言ってきたが、さすがに国際電話で通信料を払ってもらうのは申し訳なく思い、とりあえず彼女と公衆電話を探しに外に出ることにした。「まずは公衆電話を利用するためのカードを買わなくちゃね」と言われ、近くにあった小さなコンビニのような場所で公衆電話カードを買った。そして公衆電話を見つけた。

アテネ市内の公衆電話

公衆電話を見つけた瞬間、いやこんなボロくて汚い電話で日本に電話掛けれるわけないやんと思った。ただ隣で電話するように促してくる彼女に従い、+81から始まる日本の実家に電話を掛けた。すると何秒後かに電話を繋いでいる音が聞こえてきた。その時慣れ浸しんだ声が聞こえた。母の声だ。日本は深夜であったため、だいぶ暗い声で母が電話に出た。まさにオレオレ詐欺のように、とりあえず"オレ"がギリシャから電話していることを何度も言い続けた。何度目かに母は電話先が僕であることに気付き、とりあえず状況を全て伝えようとした。しかし、電話は急に切れた。もう一度実家に電話を掛ける、また繋がるという行為を3度ほど続けた。国際電話だからなのか長い間話すことができない。母は物分かりが良かった。「明日の朝一で携帯の通信を止めるね」といい電話が切れた。母の声が聞こえなくなった瞬間、なぜだかわからないが不安感が急に増した。後に母に聞いた話だが、この時母は最初、僕がテロか何かに巻き込まれと思ったと言っていた。当時の僕からしたらテロよりも危険な状況にいる感情だった。

最悪な出来事の後は幸せが待っている

電話を終え、店に戻った。とりあえず携帯の通信を止めたことを伝えると、みんな安心した表情になり、再び陽気さを取り戻し始めていた。僕は反対に時間が経つごとに不安感が増していた。その時店にいた人達と話していたことは何も覚えていない。頭が真っ白だったのだ。
ある程度時間が経った後、シドレアが「今から友達が車で来るから一緒に夜のドライブ行かない?」と誘ってきた。今思えば、初対面・異国・携帯がない(緊急連絡ができない)状況であったことを考えると、ドライブに行くなんて危険なアイデアだ。ただその時の僕は頭が真っ白だし宿泊先に帰ってもすることがないしと思ったせいか、誘いを承諾した。
若い女性2人組が店の前に車で来た。シドレアは僕の手を引っ張り、一緒に外に出ることになった。するとやけに2人組の女性がにこにこしている。なんでだろうと思っていたが、その内の1人がポケットから見てはいけない”緑のブツ”を出してきた。同時に「丘に行こう!」と言い、車に乗り始めたため、僕も一緒に乗り込んだ。20分後くらいで丘に着いた。外に出た僕はその丘からのアクロポリス(パルテノン神殿)が幻想的に見え驚いた。記憶にある中で一番景色が良かった場所かもしれない。そしてそんな絶景の中で緑のブツ片手に”最高な時間”を過ごした。

つづく。

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