雨沢僕

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マイキーとドクロ団の秘密 25

三人はゆっくりと階段を降り始めた。なんとか足元は見えるが気を抜くと踏み外しそうになる。段々と目が慣れて周りが岩で囲われた円柱状の縦穴である事がわかった。 「ねえマイキー、みんなを見つけて帰ったらさこの冒険を漫画にしようよ。僕が絵を描いて君が話を書いてさ、きっと凄い漫画になるよ。だって今凄い冒険をしてるんだから」 「君は絵が上手いし面白そうだね。きっとやろう。上手に話が書けるかわからないけど、、帰ったら、、帰ったらやろう」 「じゃあ帰ったらそれ、ワタシがパパに言って見てもらうわ

    • マイキーとドクロ団の秘密 24

      部屋に響いた音を聞きコリンとエミコは慌てて立ち上がった。 「マイキーこれは、、!」 低いモーター音と共にギシギシと何か歪んだ様な音も聞こえて来る。 「あ、あれ!」 マイキーは上を見上げ指差して叫んだ。二人はそれを聞き一斉に上を見る。すると天井に吊るしてあったオブジェが徐々に下に降りてきていた。呆然とそれを眺めていた三人にがようやくその全貌を目にし口を開く。 「螺旋階段、、、」 その巻き貝のオブジェだと思っていた物はゆっくり中央の穴の中に入り込み、ここよりさらに地下へと降りる為

      • マイキーとドクロ団の秘密 23

        マイキーは無意識のうちにこぼれた言葉を慌てて反芻した。 「かぜのかみ いかれるそのめ しゅにそまりいかなるみちもとざされん かぜのうむ いのちをささげしたみのむれ それでもおのがくびさしださぬなら てんからのみちはとざされん、、、」 「風の神 怒れるその目 朱に染まり、、、」 マイキーはもう一度壁の絵を見た。神様が風を吹いている部分。さっきは気付かなかったが描かれた神様の目は赤く無表情ではあるが捉えてようによっては無慈悲な裁きを下している様にも見える。 「如何なる道も閉ざされ

        • マイキーとドクロ団の秘密 22

          部屋に残った三人は一旦扉の前に座り少し休む事にした。 「ふぅ。色々ありすぎてもう何が何やらわからなくなったよ」 コリンはどしっと腰を下ろし大きなため息をついた。 「確かに。ワタシも流石に疲れたわ。それにみんなゴメン。まさかお婆ちゃんが悪者だったなんて、、」 エミコもため息を漏らし、壁に背をつけたまま地面にへたり込んだ。 「ふふふ。驚いたよね。でも大丈夫だよ。きっと何か訳があるんだよ」 マイキーは空気が重くならないよう明るく返事をした。エミコもコリンも微笑んで頷いている。 「そ

        マイキーとドクロ団の秘密 25

          マイキーとドクロ団の秘密 21

          そこは30メートル四方程の広い空間で天井は高く何か巻き貝に似た巨大なオブジェが吊るされている。四つの壁面にはそれぞれ絵画が描かれており抽象的ではあるが神様、人間、実った稲それに象形文字の様な連続した模様が見て取れた。そして中央には円形に大きな穴が空いており闇の濃さからその深さが伝わってきた。四人(三人と一匹)は言葉を失いそれらを見ていた。 最初に言葉を放ったのはハッピーだった。 「ニャニャニャニャーニャニャ、、、ニャ」 そう言って今来た道のちょうど向かい側、穴を挟んだ対面に向

          マイキーとドクロ団の秘密 21

          マイキーとドクロ団の秘密 20

          神殿ではドミニクがマイキー達を追いかけようとしていたがマギーが片手でそれを制した。 「まちなドミニク。いいさ。これで袋のネズミ慌てることはないだろう」 「ん、まあそれもそうだな」 ドミニクは立ち止まり一度深呼吸した。そして屈んでさっき噛まれた足をさすりながら言った。 「ふう。それにしてもあのネコ昼間に会ったヤツだろう。何でこんなとこまで追いかけてきてんだチクショウ」 「アタシだって知らないよきっとお人好しの猫なんだろう。それより団長は何処だい?アンタと一緒じゃあないのかい」

          マイキーとドクロ団の秘密 20

          マイキーとドクロ団の秘密 19

          ドミニクの後ろに現れた小さな影は音もなく彼に近づきその足に噛みついた。 「ぐぁ」 急に激痛がはしり低い呻き声をあげ思わず膝を折る。その隙に横を駆け抜けマイキー達の側に来た。 「ハッピー!」 コリンが思わず声をあげた。他の二人も驚いた様子でハッピーを見ている。 「どうしたんだいこんなところまで!僕の心配してきてくれたのかい!」 コリンは興奮してスンスン鼻をならしながら屈んでハッピーの顔を見た。 「まぁ違うとも言えないわね。そんなことよりアンタ達結構まずい状況よこれは」 ハッピー

          マイキーとドクロ団の秘密 19

          マイキーとドクロ団の秘密 18

          三人は思わず顔を見合わせた。誰か来たのか。いや、元々どこかに居たのか。それぞれの思惑を胸に入り口の方を見た。 そしてそこに現れたのは、、、 マギー。そして町でレストランを営むシェフドミニクだった。マイキーとエミコはギョッとしたがコリンは安堵の表情で話しかけた。 「あー!何処にいたの?探したよー。僕びっくりしちゃっただって来たら誰もいないんだもの。ねー他の人は?お母さん達もいるんでしょ?」 マギーはニコニコ笑いながら答えた。 「あーー勿論みんないるよ、修理が終わったからあっちで

          マイキーとドクロ団の秘密 18

          マイキーとドクロ団の秘密 17

          ハッピーを目の前に人間は銃を垂れたまま固まっていた。一連の起こった出来事に脳の処理が追いついていなかった。そして今一匹の猫に思いっきりメンチをきられている。さらにハッピーはひとしきり顔を見たあとゆっくりと動き地面に向いた銃口に自ら額をあてこう言った。 「さあ。撃ちなさいよ。アンタが引き金を引く瞬間にアンタの目ん玉くり抜いてやるから」 もちろん人間には何を言っているかは分からない。しかしその銃口を額に当てるという異常な行動と凄みのある鳴き声で人間は尻込み膝はガクガクと震えていた

          マイキーとドクロ団の秘密 17

          マイキーとドクロ団の秘密 16

          「あっちだあっちに行ったぞ」 人間の声、複数いるようだ。そしてこの台詞。ハッピーは人間の言葉が理解できる。嫌な予感がした。というよりほぼ確信に近かった。イノシシは気が立っていて気づいていない様だ。そして予感は的中した。イノシシの後方に猟銃を持った人間を三人確認する。密猟者だ。この巨大なイノシシが何故あんなにキレて突進してきたのかようやく合点がいった。出会う前にこの人間達と一戦交えていたのた。そして追われているところに子に近づくハッピーを見て怒り狂ったのであろう。 「ふんっ。な

          マイキーとドクロ団の秘密 16

          マイキーとドクロ団の秘密 15

          一方その頃。 ハッピーは北ゲートを抜け森の中にいた。神殿にはきっと罠があるとマイキー達に伝えるため急いで後を追ってきたのだ。しかし今ハッピーは神殿に向かう事が出来ずにいた。なぜなら目の前に行く手を阻む大きな黒い固まりが立ちはだかっているからである。 それは巨大なイノシシであった。 「ンゴッンゴッンゴッ」 荒い息づかいがその者の怒りを物語っている。傍に直径50cm程の倒木があったが、これはこのイノシシの突進により一撃でへし折られたものであった。 「ふー今日は変なのによく出会う。

          マイキーとドクロ団の秘密 15

          マイキーとドクロ団の秘密 14

          エミコの家から神殿へ行くには北のゲートを抜けて森を歩かなくてはならない。この森は神聖とされ動植物を獲る事は禁じられている。神殿への道は一応わかる様にはなっているが基本的に人の手は入っておらず手摺りや明かりなどはもちろん舗装もされていないので、町の住人が無闇に近づくことはなかった。 「ふう僕ここ嫌いなんだよ。何故って凄くしんどいだろ。道はガタガタだし虫は出るし去年の収穫祭の時なんてこーんな大きなイノシシの親子が目の前を横切ったんだよ。んごっんごって無茶苦茶怖かったんだから」 町

          マイキーとドクロ団の秘密 14

          マイキーとドクロ団の秘密 13

          「まちな」 ハッピーはマイキー達がエミコの家に向かう時から屋根伝いについて来ていたのだった。今まで受けた恩を仇で返すような猫では無い。当然コリンやママの安否を気遣っての行動である。 マギーは屋根から落ちて来た猫を見てギョッとした。 「あ!お、お前、、いや、ど、どうしたのかな?猫ちゃん、、どうちたんでちゅかねこちゃぁん」 「ふん。動揺してるね。無理もないアタシが分かるねバアさん」 ハッピーはゆっくり体勢を整え如何なる動きにも瞬時に反応できる狩の構えをとり、さらに続けた。 「そり

          マイキーとドクロ団の秘密 13

          マイキーとドクロ団の秘密 12

          エミコの祖母マギーは駄菓子屋を営んでいる。 軒先の「マギーの駄菓子屋」と書かれた暖簾が印象的で、これはエミコの父親がマギーにプレゼントしたものである。「ん?なんだいこのヒラヒラした変な布は。ん?手触り良し。ん?文字も良い。ん?店の軒先に。ん?ん?」と言いながらすぐに店に飾っていた。 エミコは暖簾をくぐり中へ入った。 「おばあちゃーん」 マイキーとコリンも後に続いて中に入り呼んでみる。 「おばあちゃーん」 やっぱり居ないか、、と思い表に出ようとしたその時。 「誰がクソババァだい

          マイキーとドクロ団の秘密 12

          マイキーとドクロ団の秘密 11

          エミコは日本人である。正確に言うと戸籍はそうで血はハーフという事になるが、本人は東洋的容姿も含め自分は日本人であると認識していたし、なにより誇りを持っていた。父親が日本の漫画家で留学に来ていた母と出会いエミコが生まれた。職業柄世界中どこに居ても仕事ができるので好奇心の強い父親はこの町に住める事を喜んだ。幸いお金には困っていなかったのだが、こういった狭いコミュニティに入り込むのは何かとしがらみが多く面倒だったりする。エミコの母親の生家も残っているし決断は早かった。今はその家に家

          マイキーとドクロ団の秘密 11

          マイキーとドクロ団の秘密 10

          エミコの家は北ゲートのすぐ側にあり屋上からは町の北に広がる広大な森が一望出来た。この森は神聖とされ中央付近にある小さな泉のほとりには石造りの神殿が建てられている。中は装飾品などは一切無くがらんとした箱で奥の壁面に自然を司る神の像が祀られているだけであった。普段は誰も立ち寄らないが年に一度秋の収穫祭の時町の皆で祈りを捧げに行く。 さらに北の山々から降りてくる澄んだ風が森の英気を運び町をいつも清浄に保ってるといういう古い言い伝えがあり、歴史上この町と自然とは密接な関係にある事が分

          マイキーとドクロ団の秘密 10