中２の息子との会話は多くない。ゲーム、スマホいじり、少々の勉強で大忙しだ。話しかけても単語で返して終わり。テンションはだいたい低い。扉はすぐ閉じる。 「中２男子なんてそういうもんでしょ」と言われるが、僕はあきらめが悪いのだ。 息子は食べるのが好きだ。ご飯の時間、気に入ったメニューだと、ちょっとテンションが上がる。 そして、今週は学校の三者面談のため、３日連続で午前中までしか授業がない。昼は家。 これは、父のメシで扉をこじあけるチャンス。 == １日目チャレンジ：買
その日はバレンタインデーだった。 「一杯だけでも、いいかな？」 そう言ってカウンターに座ったのは、60歳くらいの紳士。手には紙袋を持っている。 「あ、これ？ これはねえ、ほら、あの有名なパティシエの限定もの。３ヶ月前からデパートに予約入れていて、なんとか手に入ったんだ。」 河野と名乗るその男性は、嬉しそうにカウンターにチョコレートを並べた。 「こっちは、近所のスーパーで買った、安いやつ。僕はスーパーのでじゅうぶんだからね。でも、うちの可愛い優子ちゃんはデパートのじゃ
