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ぼんくら

マンガ「ピアノの森」の中の話。
ピアノの天才、一ノ瀬海が最初に出場したコンクール。
そこで出会った女の子「便所姫」こと「たかこ」。
たかこは真剣にピアノをやっている女子だが、極度の緊張で
いつもコンクールでは上手く演奏ができない。
そんな時カイに出会い、カイのお陰で初めて自分の演奏ができるようになり
かつ、カイのピアノに恋をしてしまった。
カイはこのコンクールで素晴らしい演奏をしたにも関わらず
いわゆる「天才」の演奏であり、コンクールでは採点不可。ということで
予選落ちしてしまう。
たかこは素晴らしい演奏をしたカイを落としたコンクールに納得がいかず
また、その後もカイ(のピアノ)に会いたくて
コンクールに出場し続けていた。

そんな中「シバ先生」という先生がたかこに声をかける。
「君をみたのはもう7回目かな。ボクの所で勉強しないかい?」
「7回目ということはあのカイの演奏も聞いたのよね。
どうしてあんなに素晴らしい演奏をしたのに彼を落としたの!」と問い詰めるたかこにシバ先生はこう言うのだ。
「それは審査員が全員ぼんくらだったからだよ。
こんなぼんくらに教えてもらうのは嫌かい?」

たかこはやっと答えを出してくれたシバ先生を信頼し
その後、シバ先生の元で勉強していく・・・とつながっていくのだが。

さてこの「ぼんくら」。
辞書によると
ぼさっとしていて鈍い人。間の抜けた様子人間程度が低い様子
とまあひどい描写。
私が「ぼんくら」という言葉を聞いたのは
ばあちゃんがよく見ていた時代劇だったかも。
寝てばっかりいて働かない亭主にむかって働き者の妻が
「このぼんくらが!とっとと起きて働きやがれ」とか?
普段の生活ではたしかに使わない言葉である。

ところで、最近読んでいた瀬尾まいこさんの「その扉をたたく音」という
本のあらすじにぼんくらという言葉が出てきた。
さくっと読めて、音楽のことも出てきて面白かったので
娘にオススメした。中2女子です。
娘があらすじを読んでいた横で私は別の本を読んでいたら
彼女が「ボンクラシックか」とつぶやいている。
私は本を読んでいたのでその言葉が頭に入ってこなくて
音として聞いていたのだけれど、どう聞いてもその音に聞き覚えがない。
「ぼんくら・・ボンクラシックか」と二回目につぶやいた時に
はっとした。

え?ボンクラシックってなに????

娘は言う。「え、ぼんくらのことでしょ?ボンクラシック」
「は?なにそれ。どんな字かくの?」
「平凡の凡にカタカナのクラシックだよ」
「え、じゃあピアノの森のシバ先生が言ってた、こんなぼんくらに
習うのは嫌かい?のぼんくらも凡クラシックだと思ってたの?どんな意味?」
「つまらないクラシックの演奏をする人、の意味」

ひえええええええええええええええ。
元から日本語が不得意な娘だとは思っていたけれど
ぼんくら、知らないんだ・・・・。と驚いた。
たまたま娘が出会った「ぼんくら」が出てくる描写が
音楽にまつわることだったので「凡クラシック」でも筋は通っていたのかもしれない。時代劇ももはや化石と化している時代だから
「とっとと働きやがれ、このぼんくらが」も見たことないだろう。
とはいえ・・
いやーーびっくりしました。
そしてめっちゃ面白かった。
「凡クラシックってなにさ!凡クラシックって活用範囲めちゃ狭いじゃん」とか。
どうやって使うかな
「あの人の演奏ぼんくらよね」とか?
すごい悪口!!!とか考えて爆笑した。
ぼんくらの本来の意味も加えて更に「平凡なクラシック演奏家」って
演奏家としてはめちゃ致命的。こんな言葉誰に向かっても使えないわ・・・と思いながら
あ、つまんない演奏しているときの娘に使おうと思った。

「つまんねえ演奏してんじゃねえ。このぼんくらが!」
(ぼさっとしていて、そして平凡でつまらないクラシック演奏をする奴、の意)

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