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響いた「ド」の音

ピティナコンペティションというピアノコンクールのでっかいやつがあり、
初夏から夏にかけて全国の子供、大人が予選、本選を経て全国大会を目指して、あるいは全国1位を目指して頑張ります。
級にわかれていて、幼児のA2級から始まり高校生ぐらいのF級まで
そのあとは特殊なG級などがあり、トップの級は「特級」と言われるもので
ちょっと別格に扱われます。
課題曲が古典のソナタ、エチュードなどで組み立てられ
二次予選、三次予選、セミファイナル、ファイナルへとすすみ、ファイナルはオケとコンチェルトの演奏をします。全国大会の最終日程ぐらいに
ファイナリスト4組の演奏がサントリーホールで行われるので
子供が全国大会に行くことができると、ついでに特級のファイナルも聞くことができる✨というおまけつき。
特級は予選からその動画をみることができその後の予選も全て配信されるため、好みの演奏者を決めてその人の追っかけをして見ていくことが夏の楽しみでもあります。
うちの娘はピアノを弾くことは好きらしいけれど聞くことはあまり興味がなくてほぼ寝るので、特級の追っかけも私がやっています。
その特級の予選が始まり先日予選動画が配信されました。26名の演奏動画です。
数年前はなんとなく知っている人の演奏だけちょろっと聞いて3次予選あたりから本腰を入れて聞いてたのですが、今年は一人目からじっくりと聞きました。

全部聞くぞ!と思ってるのに途中でどうしても聞けずに終わってしまう人
あまり聞こうと思ってなかったのに最後まで聞いちゃったと思う人・・
私の好みがなんなのかいまいちわからず、どうして「この人好き!」
「うーーん好きじゃない」と思うのか明確に分析したことがなかったので
試しにやってみました。

ところで、娘の出るコンクールを長年見聞きしてきた中で
常に上位に入賞する子がいて、その子供たちの演奏も
「この子の演奏の何がいいのかよくわからん・・・」という子と
「うん、私もいいと思った!」という子がいます。
審査員も人間。好みもあるし、男の子の演奏が好きって先生もいるし
女の子がいい、と思う先生もいるし
カチッとした演奏がよかったり、少し自由な演奏がよかったり
そんなの審査員の好みだから審査結果で一喜一憂してはならん。というのが娘の先生の教えです。
それにしてもいっつも一位だったり金賞だったりする子がいて
私は「本当にこの子の良さが全くわからん・・」と思ってしまうのですが
なぜなのかずっと考えていました。

特級の26名。この先を聞こうと思う人はやっぱり音。
私の好みは透き通っていて遠くに飛んでいく音。
そして音楽への愛を感じる演奏。
毎回金賞をとる子供で「そんなにいい?」と密かに思っている子の
音は平凡。そして愛を感じないから好きじゃないんだなと思いました。

先日聞いたコンクール。小さい子が演奏していたので
係りの方が椅子やペダルのセッティングをしていました。
そのセッティングがうまくいったかどうかを確認するために
子供らが「ド」の音を出していました。みんな曲を弾く前にただ鍵盤を鳴らした「ド」。ただ鳴らした「ド」なんだけれど
下を向いていた私が「え?」と思って顔をあげてしまうほど
響く音を出した男の子がいました。
10人が聞いたら10人が「あの子のド、違ったよね」って言うに違いないほどの「ド」でした。
ただ試しに弾いた「ド」はホールに響き、その後、曲を弾き始めた
バッハを、それはそれは大切そうに、その男の子は弾きました。
「この子金賞だな」と思って帰ってきましたが(なんせ何様委員会のメンバーなので。私)やはりその男の子が金賞でした。だって素晴らしかったもの。

透き通った響く音を探して、今日もまた特級の演奏を聞きます。


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