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亡き王女のためのパヴァーヌ

私が大人になってピアノを習い始めた時、それはもう
毎日毎日ピアノを弾きまくりました。
ハノン全部弾いてからバッハ、ツェルニーなども弾く、など
謂わばトレーニングをしっかりやってから曲も弾いていたので
ピアノに費やす時間もとても長かったのです。
譜読みが得意なので、パッと見てさらっと弾くことはでき、
そして当時はそれで良い、と思っていました。

娘が今の先生の教室に通うようになり、音ってこんなにステキにならすことができるんだ、曲ってこんなに弾く人によって違うのか
と学ぶ前のことです。

ピティナステップというイベントがあり、それはコンクールとは違い
課題曲や自由曲、自分で申請した曲をステージ上で弾かせてもらい
コメントをくれる先生が3人ほどいらっしゃって、あとで
講評をいただく、というイベントです。現在も全国各地で行われていますが、私の地元でも2年ぐらい行われていました。
その時、私はそのイベントのことは知らなくて、ホールのチラシでそういう
イベントがあること、1日中、色んな人がホールでピアノを演奏している、ということを知りました。

なんて面白いイベントなの☆と思い、当時お仕事も暇だったため
仕事の合間にホールに行っては演奏を聴き、また仕事に行って
ホールに戻って来るということをしていました。
だって朝から晩まで誰かがピアノを演奏していて、出入り自由なんですもの!!

翌年、娘が今の教室に通うようになり、先生に「ステップに出てみたら?」と言われ初めて参加することになりました。そして、私も参加しちゃお!と
思って参加しました。曲は「亡き王女のためのパヴァーヌ」。
楽譜を見て弾ければいい、と思っていた当時の私の演奏は
ほんとに音を並べただけの演奏で、それは今思い出したら大声でその記憶をかき消したいぐらいのもの。

まあ私の演奏はさておき「亡き王女のためのパヴァーヌ」という曲の
すんばらしいこと。題名もステキすぎる。
題名を見て、その素敵な一音を聞いただけで、もう体も気持ちも
ヨーロッパの静謐な空気の中に飛んでいってしまいそうな曲。

先日、亀井聖矢さんのコンサートに行ってきました。
後半の2曲目にこの曲が演奏され、その1音目といったらもう・・・涙

残念ながら私自身の経験ではなく、娘の演奏を見て知ったことですが、
特に、こういう静かな美しい曲を演奏する場合の一音目を出すまでの
緊張感と言ったら、すごそー。鍵盤を鳴らした時に果たして自分が思った音になるのか、細心の注意を払っていても、出たとこ勝負
みたいに見えます。「やった!」という時も「やっちまった」という
時もあり。これがプロとなれば必ずその音を出せるように
鍛錬されているのでしょうが。

それにしても美しい曲でした。
亀井さんは若くて、テクニックもあり、フォルテも力任せではなく
とても上品なフォルテを出す方なんだなあ、と感じました。

コンサートの帰り道、私より年上のお友達同士の会話が耳に入ってきました。
「私もうこれからは今日みたいな若い子を応戦することにするわ。
私の好みのピアニスト、みんな死んじゃうのよねえ」。

私もそんな年までピアノを、音楽をお友達と聴き続けたいと思えた会話でした。

動画は反田恭兵さんの演奏。亀井さんは繊細な。
反田さんは太く大人な音に聞こえます。

https://youtu.be/mN-Po9iZNn0


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