おかしな召喚主――バエル
大いなる王であるこの我を喚び出せる人間など存在するはずがない。
しかし、忌まわしい暴食の糞餓鬼に大半の力を奪われてしまった今となってはその限りではないのだと、初めての感覚を前に思い知らされていた。
我を喚び出すほどの欲深さ、どんな悪辣で傲慢な召喚主だろうと面を上げれば、まだあどけない顔立ちの童子がいた。我の姿を見て目を輝かせるその姿は、悪魔を召喚するような輩とは正反対に位置していて、己の目を疑う。
「わあ、貴方が悪魔さんですか?」
無邪気な顔で嬉しそうに手を合わせ微笑む。