未練タラ^10乗


端的に言うと、僕は浮気されていた。
人生で一番好きになった人に。
4年間 同棲した恋人に。


僕の誕生日の前日。その恋人は ″明日、映画観に行ってくる〜。″ と言った。
文面だけ見ると、バースデーボーイの僕と映画デート🩷のようで滑稽だ。

日記タイトルからお察しですよね。
もちろん、僕以外の人間と、である。

″映画...?あなた、好きじゃなかったよね?誰と?″

″あー、んー、職場の人と。″

″あー.....そっか。楽しんで。ちなみに...異性?″

″え、はい。そうですが?いや、そんな気になる?(笑) ″

″...や、あの...明日、何の日か知ってる?″

″え。わかんない。″

この瞬間、ブツン、と、糸が切れた。


切れる音まで鮮明に聞こえた。
頭ん中。心ん中。響き渡った。


ブツン。


人生初の感覚だった。

″あ.......そっか。わかったよ。″


...。
....っ。
.........っはーーーーーー!!!!💢

僕、内心、怒り状態。
心がモンハンのフルフルのようにブルブル震える。

こいつ昔、僕とジョーカー観に行った日に、映画館でイビキかいて寝たくせに!!
あんとき、超恥ずかしかったわ! あほんだら。
あんなに面白い映画で寝るような人間のくせに、浮気相手と映画を観に行くとかほざくのである。
やけに楽しそうにほざくのである。
僕の誕生日とか跡形もなく忘れている、この人は。

干してる最中の洗濯物をぎゅっと握った。


″はあ(笑)誰と、とかさ...。なんでそんなに気になるかな〜...。″

ジョーカーイビキ寝ヒューマンは、悪態とため息を軽くついて、換気扇の近くでタバコを吸う。
ふわっと煙が舞う。

タバコだって、付き合って1年経ったときに、せーの!で一緒に辞めたのに。
健康のために、もう二度と吸わない、って。
2人で長生きしよって、指切りげんまんして。


この4年間、
守ってもらえた約束 < 破られた約束
だった。


ブツンと切れた糸を物憂げに見つめる自分が、そう呟く。

それでも一緒にいたかったんだよ、と、ブチブチに切れてる糸を必死に結ぼうと足掻く自分もいて、悲しくなる。

項垂れた洗濯物と自分を重ねた。

こいつの指、切ってやれ!😈‪♥️


垂れに垂れた未練が悪魔となって、僕の耳元で囁く。

いや、いいよ切らなくて。

肺がダメになって、どうせ僕より早く死ぬし。
死んだ日に指をさしてさ、笑ってやろーぜ。




別れを切り出したのは僕からだった。


浅野いにお先生の、ソラニンという作品が好きだ。
一人ぼっちになった部屋で、何度も読み返した。
何度も、種田くんと、自分を重ねた。

ゆるゆると続く幸せな同棲生活。
そんな僕のなかにも毒の種があって。
そんでこの人が、毎日少しずつ水をやっていって。
悪い芽が芽生えてしまったんだと思う。


これが、つい数週間前の出来事。

ジョーカーイビキ寝ヒューマンから、昨晩連絡がきた。
近々、その浮気相手と同棲するらしい。
まぁ端的に言うと、だからさっさと家から出て行ってくれ〜!、とのこと。
今のお前、邪魔者だよ〜!とのこと。


仕事に行けなくなるほど悩み苦しんだ僕に、この人は、軽く、あっけなく、幸せな現状を告げた。


″...ふふ。″


恨みとか妬みとかそういう感情ほっぽって、なんかすごく面白くなっちゃって僕はクスッと笑った。

このようにnoteに書き書きカキコしてるのは、そういう訳である。
この救いようもない憂いを、どうにかして面白おかしくしてやろう、と思った。


この人のようになりたいと思った。
ふと思った。
いや、ふと、じゃないな。
ずっと思っていた。

この人のようになりたい。
この人のことを好きだった理由が、これだった。

この気持ちいいくらいの感情の振り切り。

これに毎回振り回されることが、僕は気持ちよかったのだ。
楽しくて堪らなかったのだ。
自分には到底、できないことだからだ。

あーあ、馬鹿だな。


クスッと笑ってしまう。
究極のドMだな、僕。
涙が止まらない。


馬鹿だな。


毎晩、未練が目尻からダラダラ垂れてくる。
奔放というのは危うい魅力だ。
二度と騙されないぞ。
良い経験、できたよなぁ!

馬鹿だな。馬鹿だ...僕は。


未練たらたらたらたらたらたらたらたらたらたらたらたらたらたらたら....

10乗なので。まだまだ続いていきますよ。

いつか泣かずに話せる日がきたらええな。
あーあ、好きだったなぁ。

あいつ自身が毒だったんじゃねーかな。

なんてね。

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