見出し画像

「私がメシア」と言われたら【礼拝メッセージ】

《はじめに》

キリスト教会の牧師が大学のチャペルや幼稚園で話している2000字前後の短い聖書のメッセージです。購入しなくても全文読めます。

《聖 書》 使徒言行録1:10〜11

日本聖書協会の「ホームページ等への聖書の引用について」に基づき、聖書の引用を適切な範囲内で行うため、聖書箇所のみ記載しています。該当する聖書箇所を「聖書本文検索」で「書名」と「章」まで入力し、「節」入力を省略すれば、章全体を参照できます。

《メッセージ》「『私がメシア』と言われたら」

 キリスト教系新宗教の中には、聖書に書いてあることを利用して、学生や主婦や高学歴の人たちまで自分たちに従わせる「破壊的カルト」と呼ばれるグループがあります。その中には「私が再臨のメシア(再びこの世にやってきた救い主)です」と言う教祖がいたり、「死後の裁き」や「終末」の恐怖を煽って、財産や献金をささげさせるリーダーがいます。

 キリスト教主義を掲げるミッションスクールの教師たちも、そうした危険な団体に、学生たちが巻き込まれるのを防ぎたいと思うでしょう。でも、健全なキリスト教会と、そうでない教会を見分けるのって、実はけっこう難しい。危険な団体は最初から怪しい匂いがする、何となく雰囲気で分かる、と思ったら、決してそうではありません。

 いやいや、教会の牧師が「私がメシア(救い主)です」なんて言い出したら、すぐ怪しいって分かるじゃないか? 自分がイエスの生まれ変わりだとか、天から降りてきた救い主だとか教えられたら、明らかに普通のキリスト教じゃないって気づくじゃないか? そう思うかもしれません。

 でも、キリスト教を装う破壊的カルトも、そんなに馬鹿じゃありません。最初から怪しまれないように「教祖がメシア(救い主)だ」という教えは、徹底的に信頼されるまで隠しておくんです。そして、一緒に聖書を勉強しながら、世の終わりに、再びやってくる救い主って、実はあの人のことかもしれない……と徐々に刷り込んでいくんです。

 あくまで、無理やりにではなく、本人が聖書を学んで、自分で「真理に気づいた」と思わせる。「ここに書いてあるメシアって、再びこの世に訪れる救い主って、実は先生のことなんじゃないか?」と考えさせる。そういうふうに上手く誘導していきます。そしてある時、「特別なことに気づいてしまった」「真理に気づかされた」となるんです。

 みんなは知らないけれど、私は本当のことに気づいている……という状況は、抗えない快感に満ちています。陰謀論を信じた人が、進んで、その考えを支持する情報を集めるように、教祖をメシアと信じた人も、進んで、そう思える材料を聖書の中から見つけていきます。そして、周りの信者も、それを一緒に補強していく。

 世の終わりがいつ来るか、どういうタイミングで訪れるか、私はみんなと違って気づいている! 救い主がいつ来るか、今どこにおられるのか、私はみんなと違って知っている! 死後の裁きや世の終わりにも、私はみんなと違って対処できる!……こういうステータスに身を置けたら、確かに「安心」かもしれません。

 でも、聖書に出てくるイエス様は、自分が天に挙げられる前、こんな言葉を残しています。「父が御自分の権威をもってお定めになった時や時期は、あなたがたの知るところではない」……自分が再びやってくる日も、神の国が到来する日も、イエス様は教えませんでした。その日、その時がいつ来るか、人々に教えるよう命じることもありませんでした。

 「私たちは秘密を知っている」「私だけが分かっている」という形で、人々をコントロールすることを、イエス様は望まなかったんです。むしろ、イエス様が天に昇った後、誰が見ても「この方は救い主だ」と分かる形で、再びこの世にやって来ると、弟子たちに伝言を残します。

 「なぜ天を見上げて立っているのか。あなたがたから離れて天に上げられたイエスは、天に行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で、またおいでになる」……写真や映像ではなく、目の前で人が天に昇っていく。それを弟子たちが見たのと同じように、同じ有様で、イエス様は天から私たちのもとへ降りてくる。

 「私がメシア」と言われたら、あるいは「この人がメシア」と思わされたら、本当に、誤魔化しようのない形で、イエス様はまたおいでになる、と書き記された、聖書の言葉を思い出しましょう。

 この方は、信じない者が信じる者となるように、戸に鍵をかけた部屋に現れ、復活を疑う者に傷を触らせ、自分を見捨てた者に「平和があるように」と言ってきた方です。誰もが信じて救われるように、自分を現し続けてきた方です。恐怖や不安を煽って支配しようとする者から、皆さんが守られますように。

ここから先は

0字

¥ 100

柳本伸良@物書き牧師のアカウントです。聖書やキリスト教に興味のある人がサラッと読める記事を心掛けています。サポート以外にもフォローなどお気持ちのままによろしくお願いします。質問・お問い合わせはプロフィール記載のマシュマロ、質問箱、Twitter DM で受け付けています。