遠くにいた海賊
あの橋の向こうに、大きな船が見えるでしょう?
あれ、海賊なんだよ
最初はもっと遠くにいたんだけど、日に日に大きくなってるの
何かを盗みに来てるのか、偵察しに来てるのか
はたまた、財宝を自慢しに来たのか
大きくなっていくの
いつか、ここにたどり着くのかな
少し怖い
けど、ちょっとワクワクしてる
もし、私と海賊が戦ったらどっちが勝つかな
私は弱いから、きっと全て海賊に譲っちゃいそう
それでもいいと思ってしまう
「大きくなるモノ、次第に全てを奪い、我々は思いを馳せる」
それを不安がる人もいる
霧が晴れずに、どんな船なのか見えない人も
けれど
今、海の向こうで見えている景色は、幻覚なんだ
船が大きくなっているのは事実
けれど、あなたが見ている船は幻覚
あなたが思い描いた船
老いぼれた船が見えても、子をつれた船が見えても、所詮あなたの幻覚
ねえ、隣を見てよ
今、誰と過ごしてる?
足元を見てよ
どこに立っている?
あなたが幻覚しか見ないから、風の心地良さに気づかない
あなたが足元を見ないから、今咲いている綺麗な花に気づかない
枯れるか、踏み潰されるか
綺麗事の中に
あなたが綺麗なものをなかったことにしてるものがある
海賊たちは、全てを吸い込んでなかったことにしてくれる。焼け野原になった匂いを嗅ぎつけて、そこに留まる人もいる
あなたには、どんな船が見えた?
海賊たちは、全てを平等に奪っていく
私は全てを譲ってしまう
それでもいいと思ってる
そうじゃないと、幸せを感じる前に、私は奪われる
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