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「伊波杏樹」とは一体ナニモノなのか?

本日2/7は伊波杏樹さんの23歳のお誕生日です。おめでとうございます。私の年齢と……数えるのはやめておきましょう。昨年になりますが、有難いことに2018年2月25日に開催されたクリスマスイベント「An seule étoile」に参加させて頂けましたので、振り返りながら伊波杏樹さんについてつらつらと語ってみようと思います。

私と伊波杏樹さんの出会いは2015年、「ラブライブ!サンシャイン!!」でした。とはいえ別項で触れたとおり当事はそこまでコンテンツに執着していたわけではないため「一応リーダーの高海千歌を演じる彼女が、次のラブライブを背負っていくことになるのか」程度の印象でした。

その少し後、ダンガンロンパおよび舞台に興味があった私は「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE 〜さよなら絶望学園〜」を鑑賞し、澪田唯吹を演じる彼女に出会いました。より正確には「出会っていました」というべきでしょう。今考えると信じられないことですが、当時まったく伊波杏樹さんであることに気がついていなかったのです。それくらい、当事は執着がありませんでした。

翌年7月の「ラブライブ!サンシャイン!!」のアニメ化による人気爆発を期に、高海千歌を演じる彼女に触れる機会は増えていきました。その後の「ラブライブ!サンシャイン!!」関連での活躍や伝説は敢えて私が書くまでもないでしょう。というか書くと長くなってしまいます。調べれば熱心なファンの方々がアツい思いを語ってくれています。私もまた、彼女の魅力の一端に触れることとなりました。

そんな中、2017年、「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE 〜さよなら絶望学園〜2017」として先述した公演の再演が決まりました。懐かしく思うと同時に、今なら澪田唯吹を演じるのが彼女であると認識できるのだろうと思っていました。

しかし、できませんでした。

ダンロン特有の特徴的なメイクのせいでしょうか。それもあるでしょう。しかしそれだけではありません。彼女は役者として、あまりにも役になりきっていたのです。当時彼女の個人番組に一切触れていなかったこともありますが、私はふと、実はまだ「伊波杏樹」を知らないのではないか、という疑念を抱きました。私が出会ったのは「高海千歌を演じる伊波杏樹」でも「澪田唯吹を演じる伊波杏樹」でもなく「伊波杏樹が演じる高海千歌」であり「伊波杏樹が演じる澪田唯吹」であったのではないか、と。

その疑念は2018年11月の東京ドーム公演を経ても晴れることはなく、12月公演の主演舞台「アンチイズム」を鑑賞してもやはり、そこに立っていたのは「伊波杏樹が演じる九条菜々」でした。

前置きが長くなりました。

そんな背景事情から、私は彼女のクリスマスイベント「An seule étoile」に参加させて頂くにあたって、ようやく何の役でもない、本当の意味での「伊波杏樹」に出会えるのではないかという期待を抱いていました。

以下、私が参加させていただいた昼の部のセットリストです。

We wish a merry chiristmas
First Love/宇多田ヒカル
すてきなホリデイ/竹内まりや
LA・LA・LA LOVE SONG/久保田利伸
はじめてのチュウ/あんしんパパ
恋/星野源
On My Own/Samantha Barks
空も飛べるはず/スピッツ
君のようになりたい/Little Glee Monster
LOSER/米津玄師
愛があれば大丈夫/広瀬香美
粉雪/レミオロメン
らいおんハート/SMAP
Hello,Worker/KEI feat.巡音ルカ
またあえる日まで/ゆず

私の年齢と……数えるのはやめておきましょう。それでも彼女の選曲は年の差を感じさせない、私のためといっても過言ではない(過言です)選曲で、「知らない曲ばかりだったらどうしよう」という私の心配は杞憂に終わりました。

「LA・LA・LA LOVE SONG」ではあんちゃんのナオミ・キャンベルになりたかった、とかくだらない感想をつらつらと述べてもいいのですが、本題は「伊波杏樹」に出会えたのか。ということです。本イベントで彼女の歌声を聴いて驚きました。やはり私の疑念はある部分では正しく、これまで私が認識していた彼女の歌声は「伊波杏樹が演じる高海千歌」の歌声だったことを思い知りました。「はじめてのチュウ」の歌声が比較的それに近かったでしょうか。途中のMCで彼女は「びっくりしたでしょ、本当はこんな(高海千歌より低い歌声)なんですよ」と笑いながら、曲に合わせて声色と歌い方と表情と呼吸を巧みに使い分けながら観客を魅せていきました。中でも「On My Own」を歌い上げる彼女は、惜しくも掴み損ねたミュージカル女優そのもので、美しくも力強く、周りからすすり泣きが聞こえる中、私も泣いていたように思います。自分でも驚きましたが、私は知らない曲で泣いていたのです。

話が逸れました。曲に合わせて声色と歌い方と表情と呼吸を巧みに使い分ける彼女を見ていると、役名こそないものの「伊波杏樹が演じるナニモノか」であるような気がして、紛れもなく伊波杏樹さんは目の前にいるのに、まだ「伊波杏樹」に出会えたような気はしていませんでした。不思議な感覚です。目の前にいるのは誰なのか。「伊波杏樹」とは一体ナニモノなのか。もうなんだか哲学的な迷宮に迷い込んでしまったような気分でした。

その問いにヒントのようなものを与えてくれたのは、彼女がブログで予告していた「ちと長くなるかもしれない」MCでした。内容を書くと「ちと長くなる」ので割愛しますが、そこで語られたのは、順風満帆ですべてがうまく回っていたように見えた、否、見せていた彼女の、挫折であったり弱さであったり人間らしさでした。それもまた、「伊波杏樹」とは一体ナニモノかという問いのヒントのひとつとなり得ます。この一瞬、ようやく素の「伊波杏樹」を垣間見たように思います。言い換えれば、これまではある意味で、「伊波杏樹が演じる伊波杏樹」を見ていたわけです。しかしそれ以上に私がピンときたのは「私は表現することが好きだから。表現することしかできないから」という類の言葉でした。

それを聞いて、やはり私が出会っていたのはすべて「伊波杏樹」だったのではないか。そう思いました。「伊波杏樹が演じる高海千歌を通して皆を楽しませる伊波杏樹」であり、「伊波杏樹が演じる澪田唯吹を通して皆を楽しませる伊波杏樹」であり、「伊波杏樹が演じる九条菜々を通して皆を楽しませる伊波杏樹」であり、「伊波杏樹が演じるナニモノかを通して皆を楽しませる伊波杏樹」であり、「伊波杏樹が演じる伊波杏樹を通して皆を楽しませる伊波杏樹」であったのではないか、と。

難しい話です。そろそろ「伊波杏樹」がゲシュタルト崩壊を起こし始めています。「伊波杏樹」とは一体ナニモノなのか。私の中での明確な答えはまだ出ていません。もっと彼女を知るためには、もう少し、彼女自身を追わなければなりません。来る3/31公演、「Super-pouvoir」も楽しみにしています。

何となく「伊波杏樹」の尻尾が掴めてきたところで、結局本イベントはどうだったのかといえば、とても素晴らしいものでした。席も4列目の通路に程近い場所であり、OPのWe wish a merry chiristmasで会場中央から登場した彼女は、私の目の前を歌いながら通過していってくれました。それから約90分に渡り、歌ったり踊ったり喋ったりする彼女を、たっぷり堪能することができました。翌日の仕事の関係でスーツこそ着ていましたが、「伊波杏樹とは……」と腕を組みながらしかめっ面で彼女を眺めていたわけではありません。熱心なファンの方たち(=いな民)と共に、ペンライトを片手に泣いたり笑ったり驚いたりして楽しんでいました。自分のライブ遍歴を振り返ってみると、フェス形式だったり、JAM ProjectであったりAqoursであったり、特にハコ推しである私は誰かひとりに焦点を当てたライブの経験をしてこなかったように思います。その点、本イベントは何も考えることなく、ただただ伊波杏樹さんを眺めていればいいわけで、実に贅沢な時間を過ごさせて頂きました。

いな民の皆さんがとても礼儀正しかったのも印象的でした。不快な奇声があがることもなく、「伊波杏樹といな民」の「伊波杏樹といな民」による「伊波杏樹といな民」のための暖かい時間と空間がそこにはありました。チケットがひとり1枚までしか取れない仕様上、隣同士が知り合いである可能性はそこまで高くないものと想像します。それでも途中の休憩時間で伊波杏樹さんに打ちのめされながらも「最高ですね」「よかったですね」と僅かに残った語彙力で感想を語り合い、隣同士でコミュニケーションを試みている姿も散見されました。

よかった。
様々なシーンを思い出すうちに、私の語彙力もどこかに行ってしまいましたので、この辺りで〆ようと思います。

そんな非の打ちどころのない素敵なイベントを難しいスケジュールの中で実行してくれた、弱くて強い当時22歳の女の子、伊波杏樹さん。
改めて、お誕生日おめでとうございます。

頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となる。