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「中園孔二・ソウルメイト展」猪熊弦一郎現代美術館


 シルバーウィークの初日、早朝から家を出て、中園公二・ソウルメイト展へと向かう。新大阪駅の改札は早くも長い行列ができていた。2時間半の鑑賞のために、平気で交通費を散財する私は道楽者だ。

 その分、グルメからどんどん遠くなっていく。

 それほど大きな画面はないのだが、それぞれの大きさの画面にピタリと決まった絵。6月から始まった会期も18日まで。フェアではわからない画家の姿が顕になるハードコアな展覧会なだけに、貴重だった。
 中園孔二さんの絵をちゃんと見たことがなかったのと、何故か絶対見なければと、毎日チラシを見ては、胸がざわついていた。

 この会場には、ほんとにいろんな絵がある。どれも暗さが満ちているのに、大仰な身振りがない。絵を描くことの秘密を、これだけ見せてしまっていいのかな、とさえ思う素直さ。
 画面は常にゆらめいているのに、整っている。不思議の国へ続くのか、得体の知れないアリスの覗き穴が、そこかしこに見うけられるのだ。このひとの作品の凄さは鑑賞よりも、躰で感じる。

 隠さずに見たくないものをちゃんと描くことができる絵描きは、それほど多くない。「さが=性」は画布の奥野まで染み渡っているが、透明だ。そんな絵を描かれた日には、こちらはお手上げになってしまうではないか。それでも、中園さんは、一緒にこの絵を見てくれる人がいなければ作品にならないと、切実に願う。
 無縁の周辺で風景と格闘する絵と作者。今日の観客は、中園さんが必要なもう一人の「何か」になれただろうか。

  個人的には、離れ難い展示空間だった。身体の半分を絵の中に持っていかれそうな画面。決して腕力で描いていないから、体力的には、もう一つ別の身体が必要だったのだろうかと、帰路の列車で瀬戸内海を見ながら思った。夕方明るい五時には大阪に戻ることができた。お昼を食べ損ねた胃に、インスタント味噌ラーメンが美味しかったこと!

☆ 明日18日が最終日、絵を描こうとしている人は、見るべき展覧会だ。
「中園公二・ソウルメイト展」猪熊源一郎記念美術館
https://www.mimoca.org/ja/exhibitions/2023/06/17/2829/

©️松井智惠         2023年9月16日筆
 

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