「関西の80年代」展;広報用コメント
「初期の作品は、絶対に大事だから置いておくのですよ」と静かに語った彼女も、当時の作品を育てた一人だった。作品を残すことは叶わぬことであったが、難を逃れたもの、秘密のスケッチや写真を展示すれば「再現できないこと」は、私の作品の重要なテーマであったことがわかる。個と公の記憶と闘う80年代の濁流から一さじの甘露を味わい、心を馳せるに至った美は「永遠」の呪縛から解かれ、いつか静かな喜びに変わるだろうか。そうあって欲しいと願う。
2022年5月25日 筆 兵庫県立美術館広報宛
©松井智惠
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