ここに惜しみない沈黙を捧げよ

ぼくは予感した——みんな光に由来していること
まじりけのない薄暮
揉まれた氷 償いようのなさで
かたちを失った 森はあかるくそしてまた、くらい

新芽は甦るもの 雨のいちずさ
ふるえる手は赤土をわかちあい
見るもののない 神々しい麦のつやつやに
したたる稲妻 礼讃の
体言、そのあまりにつよい静止……

無垢へ ふくらみつつある耳朶
野の顔、——どうやって弔おう——そちらから邂逅する
濡れた野木瓜のにおいが立ちこめ
失せる 「さようなら」
詩はぼくたちがいずれ、また
再会するときの結露のようなものだと

しおらしい種子の群れ 訪れ
葉のひとひら ひとひらは
実にならない——海になる
浮石のあぶく 光のデッサン
透明な花の焦げつき

ぼくは予感した 地中にねむる琴座
還ってゆくものたちだけが知っている
収斂しない 因果(見るもののない)
あくる未明、予感された ぼくは
瞳孔をひらいている

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