罷る釘、刮げる咎

肉厚な絵を見つめていた
壁にペンキを塗るとわかるような
不純な祈りもあるだろうか
世界への興味を失ったひとが
ひとり、またひとりと

引き渡せよ、今すぐに
ぼくの番は終わっていた
きのうの朝焼けが砂糖をとかして、
「ああ、これが今のぼくか」
刺さっていたものが
尽く抜け落ちたのでしょう?

黒く澱むシンクのなか
ぷかぷかする蜜柑は
浮き沈みの訳を教えてくれる
残虐という言葉の棘皮をひん剥いて
その上でなお
〈かけがえしかないわたし〉の水底は

愚かな山脈です
(その頂がどんな風だったか教えて下さい)
殺戮と寸分違わない息づかいで搾られた
乳白のふくらみ
いきものは道理で可憐な
ふくらみ

羊水があたたかすぎたのでわれものは
ふらりと捻り切れてしまった
おいでよ
ほじくってあげるから
逃げてよ
きみの全霊で

布告ですか?
いいえ、贖罪です

そしてわたしの渓谷を
「すみません」が流れてゆきました

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