切なる肌理

いかなる夜をきりとるか
うたをふらせる精霊は
いつかの処刑を待ち侘びる
過ちばかりが目にとまるのは
月が増えてゆくからなのです
まごころのかたちは
海よりもなお深く 暗く

花のように生きたくて
まなざしをへし折った
朽ちてしまった絵画を
抱き締めている白鳥
祈っているようだ
とり残された食卓に
ひかり射す朝は

ほぐれていく王の神経
紛争は丁寧だった
ぼくの人生はどうだ?
湖をひっくり返すように
内緒で弔ってください
それから
唾棄し、抱きしめてください

あたらしい品性の春よ
ゆるい影は信仰を装っている
宛名のない便箋に群がる人たちは
辱められるための空想をもちよる
ひらりとかわす冷淡な希望に
耐えられますように

稲妻が波止場を発つ
われた蕾が垂らすはじらいは
慈愛に満ち満ちたせいです
さあ、すべすべの素肌を見せておくれ
ひとり仲良くふれあった丘のうえ
安静とは無闇にいのちを奪うこと
であるからして
きみの梢はいつも嘘みたいに
うつくしい

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